ストーマ(人工肛門‧人工膀胱)のケア方法と
日常生活の工夫

大腸がんや膀胱がん、卵巣がんなどの手術で腸や膀胱を切除すると、今までと同じ排泄経路では便や尿を外に出せなくなります。そこで、腸や尿管を使って新たに作る、便や尿の出口のことをストーマといいます(ストーマにはギリシャ語で「口」という意味があります)。また、ストーマを持つ人のことをオストメイトといいます。

ストーマ・オストメイト

  • ストーマには便の出口である消化器ストーマ(人工肛門)と、尿の出口である尿路ストーマ(人工膀胱)があります。消化器ストーマにはストーマを作る部位によりコロストミー(結腸ストーマ)とイレオストミー(回腸ストーマ)の2種類があります。
  • 期間別の分類では、手術の際にできた腸の傷が治るまでの間だけストーマを作り、その後閉鎖する一時的ストーマと、この先ずっと使用する永久的ストーマがあります。尿路ストーマには回腸導管や尿管皮膚ろうがあり、永久的ストーマとなります。

ストーマを作って間もないと、「これから、どういう生活になるんだろう……?」と不安やとまどいの気持ちが大きいかもしれません。でも、ストーマのある生活になっても、今までどおり好きなことができます。やりたいことを我慢する必要もありません。ストーマ管理の専門家、WOCナース*の松浦信子さんに、普段の生活で気を付けるポイント、知っておくと役立つ工夫について、お聞きしました。

  • WOCナース:皮膚・排泄ケア認定看護師。創傷・オストミー・失禁看護の分野において、熟練した看護技術と知識を用いて水準の高い看護が実践できる看護師のこと。
松浦 信子 さん

今回お話を伺った方

松浦 信子 さん 
WOCナース

(公益財団法人がん研究会 有明病院 患者・家族支援部 WOC支援室)

松浦 信子 さん

著書に「快適!ストーマ生活 日常のお手入れから旅行まで」、「がん研有明病院の大腸がん治療に向きあう食事」など

快適!ストーマ生活 日常のお手入れから旅行まで

ストーマを作って変わること・変わらないこと

大きく変わるのは排泄方法です。ストーマを作ると自分の意思で便や尿を調整することができなくなるため、排泄物を受け止める専用の袋(ストーマ袋、パウチともいいます)をお腹に貼って管理し、定期的にトイレで捨てます。ストーマ袋にも、ストーマ袋をお腹に貼るための面板(めんいた:皮膚を保護する成分である皮膚保護剤を板状にしたもの)にもさまざまな種類がありますし、面板とストーマ袋が一体になっているタイプのものもあります。看護師と相談してご自身にあったものを選びましょう。

面板
さまざまなストーマ袋 ①

さまざまなストーマ袋 ①

(消化器ストーマ)
メーカーにより排泄口の巻き上げ、留め方、一体型の場合は面板の形状などが異なります。

さまざまなストーマ袋 ②

さまざまなストーマ袋 ②

(ウロストミー)
メーカーにより排泄口などが異なります。

装具交換とスキンケア

ストーマ装具は、皮膚保護剤を板状にした面板と、排泄物を受け止めるストーマ袋で作られています。皮膚保護剤には、①皮膚に排泄物が付かないように皮膚を守る作用、②汗や排泄物の水分を吸収する作用、③皮膚に密着する作用などがあります。つまり、皮膚を排泄物から保護し、正常な皮膚の働きを維持するはたらきがあります。
装具(面板とストーマ袋)は定期的に交換します。交換する間隔は面板の種類によって異なり、1~3日で交換するものや5~7日で交換するものもあります。一般的には週2回の3~4日おきでの交換が皮膚にやさしく管理できます。基本的にはお風呂に入って清潔にした後に新しい装具に交換します。

  • イレオストミー(回腸ストーマ)の方:食事や水分摂取の後、2時間前後で排泄されるため、食事の前に入浴して交換するとよいでしょう。
  • コロストミー(結腸ストーマ)の方:明け方に排泄される方が多いですが、1日に1~2回程度の回数のため、排泄されない時間が長いです。そのため、それほどトイレで排泄する時間を気にしなくても大丈夫です。

外出先でも装具を交換できる設備が整えられたオストメイト対応トイレがさまざまな場所に設置されていますので、事前に確認しておくのがおすすめです。

オストメイト対応トイレについて

オストメイト対応トイレにはこのようなマークが付いています。

オストメイト対応トイレにはこのようなマークが付いています。

オストメイト対応トイレについて
オストメイト対応トイレ
オストメイト対応トイレ
汚物流し台の使用イメージ
汚物流し台の使用イメージ

オストメイト対応トイレの設置場所は下記から検索することができます。

松浦 信子 さん
松浦 信子 さん

汗をたくさん
かいたら
早めの交換を!

WOCナース 
松浦 信子 さん

交換する間隔の目安はありますが、汗をかく量や季節によっても交換タイミングを調整する必要があります。
汗をたくさんかいた場合は、面板の汗や排泄物の水分を吸収する作用の低下や、皮膚に密着する力の低下により、皮膚かぶれの原因となります。そのため、運動時や夏季は通常よりも早めに交換したほうがよいでしょう。面板が白くふやけてくるのが交換の目安です。

交換時のコツ

交換時はしっかりと水気をふき取ることが大切。はくり剤もしっかりとふき取ってから装着しましょう。タオルなどよりも、使い捨ての柔らかく吸収性に優れた不織布タイプのクッキングペーパーや使い捨てガーゼなどを使うのがおすすめです。装具を外れにくくし、かぶれを防ぐためには、皮膚の腸液をしっかりふき取った上で面板を貼るのがポイントです。ストーマ周囲の皮膚に腸液が付着しないように上手く押しぶきして取ります。

使用前の面板(左)とたくさん汗をかいた後の面板(右)
使用前の面板
たくさん汗をかいた後の面板

ストーマ周囲のスキンケアはこんなことに注意

ストーマは痛みを伝える神経がないので痛くはありません。ただ、血管が密集しており、刺激や摩擦で出血しやすいため、強い力で傷つけないようにケアをします。また、ストーマのある生活の中では、ストーマや周囲の皮膚にトラブルが生じることもあるかもしれません。トラブルが起きていないか観察し、いつもと違うことがある場合は、早めに医療スタッフに相談しましょう。(ストーマの日常ケアやトラブルを相談するには)

知っておくと役に立つ社会福祉制度

永久的ストーマを作った場合、身体障害者手帳の交付を受けると、ストーマ装具の給付をはじめ、交通機関の運賃割引など、さまざまな福祉サービスを受けることができます。また、介護保険制度を利用すると、装具交換がご自身でできなくなったときに、訪問看護師による装具交換サービスを受けることができます。ここでは申請の窓口や受けられるサービスの内容を紹介します。

身体障害者手帳

永久的ストーマの方は、お住まいの自治体の担当窓口(保健福祉課、または福祉事務所)で身体障害者手帳を申請できます。申請して障害が認定されると、身体障害者手帳が交付されます。身体障害者手帳があると、以下のような福祉サービスを受けることができます。

身体障害者手帳で受けられるサービスの例

  • ストーマ装具・ストーマ用品の給付(多くの自治体では1割の自己負担あり)
  • 美術館や博物館などの施設での割引
  • 税金の軽減もしくは免除
  • 障害年金の給付(一定の要件を満たした場合)
  • 公共運賃・料金の割引

    • JRや私鉄運賃:片道101km以上乗車する場合、乗車券購入時に身体障害者手帳を提示することにより、運賃が5割引になります。
    • 国内航空運賃:航空会社や路線によって割引率は異なりますが、割引になります。
    • 有料道路の通行料金:事前に市区町村の福祉担当窓口にて登録手続きが必要ですが、道路通行中の料金支払い時に身体障害者手帳を提示すれば通行料金が5割引になります。ETCを利用する場合も事前の登録により、同額の割引が受けられます。
    • バス運賃:都道府県で異なりますが、乗車時に身体障害者手帳を提示すれば、料金が無料または5割引になります。
    • タクシー運賃:多くの場合、身体障害者手帳の提示で1割引になります。

自治体によって受けられるサービスが異なることがありますので、ご自身がどのようなサービスを受けることができるか、各自治体の窓口などで調べてみましょう。

介護保険制度

介護保険制度を利用すると、歳を取ったり、病気になったりして装具交換がご自身でできなくなったときに、訪問看護師による装具交換サービスを受けることができます。
要介護度(介護の必要性の程度)によって利用額は異なりますが、自己負担額は原則1割で済みます。介護保険制度の相談窓口は、市区町村の介護保険担当窓口か地域包括支援センターになります。

ストーマと上手に付き合うための日常生活の工夫

ストーマの装具は改良が重ねられ、より使いやすくなるとともに日常生活にも大きな支障はなくなってきました。それでも初めてストーマを作るときは、その後の生活への不安は大きいもの。ストーマと上手に付き合いながら普段の生活を快適に過ごすための工夫や、知っておくと役に立つことをまとめました。

食事の制限は特になし!よく噛んでバランスよく食べよう

他の病気で食事が制限されていない限り、ストーマを作る前と同じ食事ができます。ただし、便の性状やにおい、ガスは食事による影響を受けるため、その調整や健康維持のためにバランスのよい食事を心がけましょう。

日常生活の工夫 食事のとき
  • コロストミー(結腸ストーマ)の方:においやガスが気になるときは食事内容を工夫してみましょう。脱臭しながらガスを排出するフィルター付き装具を選ぶという方法もあります。
  • イレオストミー(回腸ストーマ)の方:水っぽい便が多く排泄されるため、経口補水液などミネラルを多く含んだ水分摂取を心がけましょう(目安は1日800~1200mLくらい)。多量の汗をかきがちな夏は気が付かないうちに脱水症状になりやすいため、特に注意が必要です。また、繊維質の多い食品や消化の悪い食品を一度にたくさん摂るとストーマの出口で便が詰まることがあるため、調理のときに細かく刻む、食べるときによく噛むなどして、一度にたくさん食べないように気を付けましょう。
  • ウロストミー(尿路ストーマ)の方:1日の尿量が1500~2000mLになるくらいの水分摂取(食事に含まれる水分も含む)を心がけましょう。尿量が少なすぎると、尿路感染の原因になることもあります。
松浦 信子 さん
松浦 信子 さん

神経質に
なりすぎず
食事を楽しみ
ましょう

WOCナース 
松浦 信子 さん

食べたら排泄する、それはオストメイトもそうでない方も一緒です。ですので、それほど食事の内容に神経質になる必要はありません。食事によって排泄物の変化はありますが、今のストーマ袋は防水加工、防臭効果がありますので、気にせずに食事を楽しみましょう。また、ストーマ袋に入れる潤滑消臭剤などを使うと排泄処理がしやすくなりますし、においを軽減することができます。

(参考)排泄物やガスに影響を及ぼす食品

やわらかくなりやすい・消化しにくい食品
ガスを発生させやすい・抑える所億品
においを強くする・抑える食品

装具を付けたままお風呂も大丈夫です

装具には防水加工がありますので、付けたままでも湯船につかることができます。食事をしてすぐの時間は避けたほうがいいでしょう。入浴前に排泄処理をしておくのがポイントです。湯船につかるときは、手で軽くストーマ袋を押さえたり、ストーマ袋を2つに折りたたんでクリップで留めたりして入ります。装具を外して湯船につかっても問題はありませんが、ご自身のストーマに合わせて入浴の仕方を工夫してみてください。

日常生活の工夫 入浴のとき
  • イレオストミー(回腸ストーマ)やウロストミー(尿路ストーマ)の方:常にストーマから排泄物が排出されますので、装具を貼ったままの入浴をおすすめします。
  • コロストミー(結腸ストーマ)の中でも、下行結腸やS状結腸のストーマの方:便が出ない時間帯に入るのがよいでしょう。
松浦 信子 さん
松浦 信子 さん

入浴後は
装具の水気を
しっかりふき
取りましょう

WOCナース 
松浦 信子 さん

ガス抜きフィルター付きのストーマ袋を使用している場合は、入浴する際に上にシールを貼る必要がある製品に注意が必要です。入浴後は装具に付いた水気をふき取り、よく乾燥させましょう。

寝る前にはストーマ袋を空にしよう

寝る前に排泄物を処理してストーマ袋を空にしておくのが、安心して眠るためのポイントです。

日常生活の工夫 寝るとき
  • イレオストミー(回腸ストーマ)の方:就寝2時間前に食事や水分摂取を終わらせておくのがよいでしょう。寝ている間も少しずつ便がたまるため、6~7時間以上寝る場合は途中で一度トイレに起きてストーマ袋を空にすると安心です。
  • ウロストミー(尿路ストーマ):長時間寝たい場合は、畜尿袋という容量の大きい袋をストーマ袋につなぐことで、長時間尿をためておくことが可能です。
松浦 信子 さん
松浦 信子 さん

ストーマを
付けて
快適に眠る方法

WOCナース 
松浦 信子 さん

ウロストミー(尿路ストーマ)の方は畜尿袋を使うことできちんと寝る時間を確保することができます。尿が逆流してしまうと腎盂腎炎(じんうじんえん、腎臓で細菌が増えて炎症を起こすこと)の恐れがあるため、スムーズに尿が流れる工夫をしておく必要があります。寝返りの際などに畜尿袋がねじれたり引っ張られたりしないよう、パジャマの膝上に穴を開けてそこからチューブを出し、養生テープなどで固定する方法などがあります。特にストーマ袋と畜尿袋の接続部がねじれやすいため、接続部を固定するのがポイントです。

通勤・通学は装具交換できる場所を前もってチェック

予備の装具の準備(外出するときは必ず持っていこう!交換装具セット)や通勤・通学ルートで装具を交換できる場所を確認しておくと安心です(オストメイト対応トイレについて)

日常生活の工夫 寝るとき

退院後は、まずは日常生活でできることから始め、散歩程度の運動、交通機関を利用しての外出など、少しずつ身体を慣らしていきましょう。通勤や通学を再開する前に、通勤・通学時間に合わせて勤務先や学校まで行ってみることをおすすめします。また、復帰前に会社の上司や担任の先生にストーマについて打ち合わせしておくとよいでしょう。

松浦 信子 さん
松浦 信子 さん

ストーマ生活の
味方を作る

WOCナース 
松浦 信子 さん

会社の上司には、復帰後は勤務時間中に離席する可能性があることも含めて、治療や療養のことについてあらかじめ相談をしておくとよいでしょう。身体を使う仕事の場合、トイレのないところで長時間働かなくてはいけないケースもありますので、デスクワークなどの職種へ配置換えを希望したとおっしゃる患者さんもいます。
担任の先生には、授業中にトイレに行くかもしれないこと、万が一漏れてしまったら、保健室を借りたいことなどを前もって話しておくとスムーズです。保健室の先生の支援があるとより安心でしょう。

運動も自由に楽しもう

健康を維持していくためにも適度な運動はおすすめです。運動前にストーマ袋の中を空にしておきましょう。運動でたくさん汗をかいた場合は、面板の粘着力が低下してはがれやすくなっているため、通常よりも早めに装具を交換するのがポイントです。
最初は散歩などの軽い運動から始め、徐々にウォーキングなどに運動量をあげていくとよいでしょう。面板が汗ではがれたり、身体の動きでずれたりしないようにストーマ用ベルトで固定すると安心です。入浴時と同じ装具の工夫(排泄物の処理をした後に袋を小さくたたむなど)をすれば、水泳も可能です。

日常生活の工夫 運動のとき
松浦 信子 さん
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スポーツも
今までどおり
楽しめます

WOCナース 
松浦 信子 さん

登山、社交ダンス、スキー、ゴルフ、バスケットボール、バレーボール、水泳など、多くのスポーツは問題ありません。ただ、お腹を強く打つようなスポーツは、ストーマを強打すると、ストーマが腫れたり、炎症が起きたり、出血したりする可能性があるので避けたほうがよいでしょう。今までやってきたことを、変わらずできるように工夫してみましょう。

服装について知りたい!

今までどおり、どんな服装も楽しめます。お腹を圧迫するのがよくないのではないか、と心配される方も多いのですが、パンツやストッキング、ガードル、ジーンズ、着物なども問題ありません。

日常生活の工夫 服装について

外出するときは必ず持っていこう!交換装具セット

外出先で漏れてしまうのではないか、というのが一番心配なことではないでしょうか?
万が一漏れたときでも慌てずに対応できるように、交換装具セットを持って出かけましょう。オストメイト対応トイレは、不意な漏れに対応できるように汚物流し台、汚物入れボックス、着替え台などの設備が整っていますので、外出先までのルートにあるか確認しておくと安心です。(オストメイト対応トイレについて)

日常生活の工夫 外出するとき
松浦 信子 さん
松浦 信子 さん

においや
漏れを防ぐには
事前準備が
ポイント

WOCナース 
松浦 信子 さん

外出時は、はくり剤やお湯などを使うことが難しいため、ウエットティッシュで拭き、不織布ガーゼやクッキングペーパーで皮膚の湿り気を取ります。袋の中の排泄物はトイレに流し、交換後の装具は不透明なビニール袋に入れてから、チャック付きの袋に入れるとにおいや排泄物の漏れを防ぐことができます。女性用トイレには汚物入れがありますが、多くの男性用トイレには汚物入れがありませんので、そのまま自宅に持ち帰り、お住まいの地域のごみの分別にしたがって捨てましょう。

旅行するときは交換装具を多めに準備

国内旅行でも海外旅行でも行くことができます。交換装具は多めに準備して持っていきましょう。飛行機の座席指定ができる場合は、トイレに近い通路側の席にすると便利です。身体障害者手帳があると、飛行機でトイレに近い席を予約できる場合があります。
自動車に乗るときには、シートベルトがストーマにあたる可能性がありますので、シートベルトがストーマを圧迫しないように注意しましょう。気になる場合は、たたんだタオルをストーマの上にあてておくとよいでしょう。

日常生活の工夫 旅行するとき
松浦 信子 さん
松浦 信子 さん

長時間トイレに
行けないときの
対処法

WOCナース 
松浦 信子 さん

ウロストミー(尿路ストーマ)の方は、高速道路の渋滞など、トイレに長時間行けない状態になることが心配かもしれません。長時間トイレに行けない場合の対策としては、500mLの空のペットボトルを用意しておいて、そこに移し替え、サービスエリアのトイレで捨てる方法がおすすめです。また、交換用の装具は、夏場などの高温になった車内に置いておくと面板が溶けて使用できなくなるため、注意が必要です。

公衆浴場や温泉に入るときのコツ

ストーマを付けていても、温泉や銭湯などの公衆浴場に入るのは問題ありません。入浴用の小さくて目立ちにくい装具を利用するか、使用中の装具を目立たないように小さく折って、クリップなどで固定し、タオルで前を隠すように入るとよいでしょう。周囲の視線が気になる場合は、人の少ない時間帯に入浴する、家族風呂や貸し切り風呂がある温泉宿を選ぶのもよいかもしれません。

日常生活の工夫 旅行するとき
松浦 信子 さん
松浦 信子 さん

温泉に
入るときの
ポイント

WOCナース 
松浦 信子 さん

温泉に入るときに、周囲の視線が気になる場合は、タオルで下半身を隠すように装具を覆い、壁側に向いてから湯船に沈む方法がおすすめです。夜の露天風呂なども入りやすいと思います。温泉の成分がストーマに影響しないか心配する方もいますが、温泉の成分が直接ストーマに付くわけではないので、好きな温泉に入って大丈夫です。また、サウナにも入ることができます。汗をかいた後は早めに装具を交換するようにしましょう。

飛行機に乗るときは事前に面板に孔を開けておこう

機内持ち込みのバッグにも交換用装具一式(外出するときは必ず持っていこう!交換装具セット)を入れ、緊急時にトイレで交換できる準備をしておきましょう。はさみは機内持ち込みのバッグに入れると没収されてしまうので、機内に持ち込む装具の面板は事前に孔を開けておき、はさみはスーツケースに入れます。離陸、着陸時には必ずトイレに行き、排泄物を捨てておきましょう。気圧の変化で装具が破裂することはありません。狭い機内のトイレでにおいが気にならないか心配な場合は、市販の消臭スプレーを持参しましょう。(消臭スプレーは上に向けて吹きかけるのがおすすめです)。

* 海外に行くときは

空港の保安検査や、万が一渡航先で病院にかかった際にストーマについて聞かれたときのための書類(渡航先の言語でオストメイトであることやストーマの種類、ストーマケアのために装具を携帯していることについて書いたもの)、診断書などを用意しておくと安心です。
特に海外では装具の入手が難しいため、慌てることのないよう多めに装具を準備して持っていきましょう。

ストーマの日常ケアやトラブルを相談するには

ストーマを付けて生活する中でも、ふとした疑問が生まれるものです。そんなときには1人で悩まず相談することが快適なストーマ生活につながります。

ストーマ外来

ストーマ関連で気になることやわからないことがある場合は、ストーマ外来に相談しましょう。日本全国のストーマ外来は下記の一般社団法人日本創傷・オストミー・失禁管理学会ホームぺージから検索することができます。
https://jwocm.org/public/stomas/

松浦 信子 さん
松浦 信子 さん

ストーマ外来
への
定期的な
相談がおすすめ

WOCナース 
松浦 信子 さん

ストーマを作ってから、一回はストーマ外来で相談することをおすすめします。手術した病院にストーマ外来がない場合は、他院で手術した人でも受診可能なストーマ外来がありますので、主治医の先生の紹介状があれば相談することができます。
年齢を重ねると体形も変わりますし、管理状況も変わります。また、装具もどんどん進化しています。ストーマのある生活をより快適なものにするためにも、ストーマ外来で新しい情報を定期的に得ていただきたいと思います。定期的に相談に来ていただけると、ご自身では気付きにくいストーマトラブルに私たちWOCナースや皮膚・排泄ケア認定看護師が早期に気付くことができます。

患者会

公益社団法人日本オストミー協会
オストミーのための会です。災害時の対応拠点にもなりますので、お住まいの地域の支部を確認しておきましょう。
https://www.joa-net.org/

ストーマを付けた患者さんとご家族の方へ

今現在、患者さんがストーマケアを自立してできていたとしても、ストーマとそのケアについてご家族も理解しておいたほうがよいでしょう。身体機能が低下して、ご自身で管理できなくなる前に、ご家族の誰がいつ、どういう形で支援できるのかを考えておく、支援する体制を整えておくことが大切です。ストーマケアを人に頼むのがつらいとおっしゃる患者さんもいます。ただ、年齢を重ねれば、誰もが自身の身の回りのことができなくなります。決して排泄に限ったことではありません。お箸を使ってご飯を食べたり、着替えたりできるのであれば、ご自身でストーマの管理もできますが、難しくなれば、排泄を含め他の日常生活にもサポートが必要になるでしょう。ケアする人が必ずしも家族である必要はありません。介護保険制度を使って訪問看護を受ける、デイケアを利用する、サービス付き高齢者向け住宅を検討するのも選択肢の一つです。

うちはどうかな?考えてみよう!
松浦 信子 さん
松浦 信子 さん

ストーマを気にしすぎず、
やりたいことに挑戦しましょう

WOCナース 
松浦 信子 さん

ストーマのある生活がどういうものか、手術が終わってみないと実感がわかないことでしょう。今、ストーマ装具は昔と違って、よいものも種類もたくさんあります。防臭効果や防水加工がありますので、日常生活や外出先でも、においを気にすることなく、やりたいことをしていただけます。一方で、次第にストーマがあることに慣れてくると、ずっとストーマが気になったり、人に排泄物を見せる状況が普通になってしまったりする方が、実は多いのです。中には一日中排泄物のことを考えて、うつになってしまう方もいます。日本の医療現場では透明のストーマ袋が多いことが、その理由の一つかもしれません。そんなときは、中が見えない不透明なストーマ袋を使って、「見えない、見ない、見せない」環境ができると、そのうちストーマが気にならなくなってきます。手術後に身体のリハビリが必要なのと同じように、ストーマを見ない、排泄物のことを忘れる心のリハビリも大切です。そうすることで、精神的にも以前の生活により近づけることができます。
正しく、役立つ情報を得て、あなたらしいより快適なストーマ生活を過ごしましょう。