がん治療におけるコミュニケーションギャップの例
~薬物療法~
がんの薬物療法について
がんの医療で使われるお薬には、がんに対して作用するものや、痛みを抑えるもの、お薬の副作用を和らげるために使うものなど、さまざまな種類のお薬が含まれています。このうち、お薬でがんを治療することを薬物療法といい、化学療法(従来の抗がん剤治療)、分子標的療法、内分泌療法(ホルモン療法)、免疫チェックポイント阻害療法などがあります1)。
分子標的治療も薬物療法のひとつ
がん細胞は正常な細胞よりも早い速度で増えていきます。細胞障害性抗がん剤は、がん細胞の分裂を抑えてがん細胞を破壊しますが、同時に正常な細胞にも影響を与えてしまいます。そのため、脱毛や吐き気、下痢などの副作用が見られることがあります。しかしながら、最近では副作用を和らげるためのお薬など(支持療法)も進歩してきています。
近年では、「分子標的治療薬」というがん細胞だけがもつ目に見えない小さいレベル(分子レベルと言います)の特徴を見つけて、そこに作用するお薬が開発されました。薬物療法というと多くの方が抗がん剤をイメージされますが、分子標的治療薬も薬物療法のひとつです。皮膚への影響や肺炎など、細胞障害性抗がん剤とは異なる副作用が起こる可能性があることがわかっています。
分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬の条件
がん治療が進歩し、分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬など、新しいお薬が開発され、用いられるようになってきました。ニュースなどで話題となり、耳にする機会も増えています。報道では、効果が高く副作用が少ないような印象を受けることもありますが、これらのお薬の多くは効く可能性が高い条件が決まっているため、その条件にあてはまる患者さんしか使用できません。また、細胞障害性抗がん剤と種類は異なりますが、副作用もあります。
医師は、がんができた場所、がんの状態、種類やタイプなど、さまざまな条件から、あなたに最適だと考えられる治療法を提案しています。主治医がなぜその治療を提案したのか、その理由をしっかりと確認するとともに、その治療が目指す目的や期待される効果、治療に関連した制約、治療による副作用など、患者さん自身がよく理解し、納得したうえで治療に臨むようにしましょう。また、これからあなたがどうしたいか、何を大切にして治療をしていきたいか、今後予定しているライフイベントなど、医師にしっかりあなたの希望を伝えることも大切です。医師はあなたの希望を理解したうえで、よりあなたに合った治療法を一緒に考えたいと思っています。
- 監修
- 国立がん研究センター がん対策研究所
- 更新月
- 2024年10月