さまざまながんの症状と伝え方
がん治療中には、身体に起こる症状から、精神的な症状まで、さまざまな症状が起こる可能性があります。また、症状には本人が伝えなければわからないものもあります。ここでは、さまざまながんの症状と伝え方のポイントについてご紹介します。
現在、あなたが抱えている症状に該当するチェックシートを選び、パソコンまたはスマートフォンで該当する項目にチェックを入れて印刷してみてください。もちろん、該当する症状のチェックシートを印刷してから、あなたの状況を直接書き込むこともできます。ぜひご活用ください。
さまざまながんの症状
がんの治療中には、痛み、だるさ・倦怠感、眠れない、食べられないなど、さまざまな症状が現れます。これらは、がんから来る症状もあれば、お薬の副作用による症状もあります。また、がんやがん治療に伴う精神的なつらさによるものもあるでしょう。
身体に起こる症状
痛み
痛みは、がん患者さんによくみられる症状のひとつです。がんそのものが原因である場合の他に、がんの治療にともなって痛みが生じる場合や、がん以外の病気による痛みの場合もあります。これまでと違う痛みを感じる、痛みが強くなった、処方されている鎮痛薬を使っても効かない、痛みのための日常生活で困っていることがある、などの場合は医療スタッフに相談しましょう。
だるさ、倦怠感
身体が重い、これまで普通にできていたことがおっくうになった、できれば今すぐ横になりたい、などと感じることがあります。がんそのものによって生じる場合の他に、治療による副作用、痛みや貧血、不安、不眠などのがんに伴う症状によって起こります。症状が続く場合は、医療スタッフに相談しましょう。
不眠・眠れない
ふとんに入ってもなかなか眠れない、夜中に何度も起きてしまう、朝早くに目が覚めるなど、多くのがん患者さんが眠れないつらさを感じています。しっかり眠れない状態が続くと、不安に悩まされたり、だるさが生じたりするなど、心にも身体にも負担がかかります。がんやがん治療による痛み、がんと診断されたことによるショックやストレスなどが原因で起こります。不眠で困っている場合は、医療スタッフに相談しましょう。
食欲不振(食べられない、食べたくない)
食欲不振はその程度や期間には個人差がありますが、多くの患者さんが経験する症状です。がんそのものによる影響もありますし、治療の副作用で食事がおいしくない、食べたくないと感じたり、胃がむかむかしたり、口内炎ができて食べ物がしみたりすることもあります。食べ物や水分をとることができない場合や、一日に何度も吐いてしまう場合には、すぐに医療スタッフに相談しましょう。
体重減少
体重減少はがん患者さんのおよそ半数に生じるとされています。抗がん剤治療や放射線治療による副作用や診断・告知による落ち込み、がんそのものによって消化管が狭くなったり圧迫されたりすることによる食欲不振、食事摂取量の減少などにより起こります。腹水や胸水の増加により、数字上体重が増えているようにみえることもあるため注意が必要です。体重減少は免疫力の低下や副作用発現のリスクにも影響するため、原因別の対策によって最小限に抑える必要があります。継続的に体重が減少している場合には、医療スタッフに相談しましょう。
出血
痰や尿に血が混じったり、青あざができやすくなったり、手足に点状の皮下出血がみられたり、月経量が多くなったりすることがあります。また、鼻血が出やすくなったり、歯ぐきから血が出やすくなることもあります。がんそのものによる影響の他、副作用で骨髄抑制が起こることで血小板が減少することで生じている場合もあります。日常生活で出血しないように心がけることも大切ですが、症状に気が付いたら医療スタッフに相談しましょう。
貧血
疲れやすさや、めまい、身体を動かしたときの息苦しさなどを感じることがあります。造血器腫瘍や消化器がん、婦人科がんなどの出血しやすいがんによるもの、抗がん剤治療による骨髄抑制、手術で胃を切除したことによる鉄やビタミンB12の欠乏などにより起こります。貧血の程度は血液検査をしないとわからないため、貧血の症状がみられる場合や便に血液が混じるなどの出血の症状がある場合には、医療スタッフに相談しましょう。
頭痛
頭部に痛みや重さを感じることがあります。脳腫瘍や脳転移、副腎腫瘍から生じる高血圧で起こるものの他に、手術や抗がん剤治療、放射線治療にともなって起こることもあります。急ぎで対応が必要なケースもあるため、頭痛の症状が出る時間や持続時間、部位、特徴に加え、他の症状も一緒に生じている場合は合わせて伝えることが大切です。今までに経験したことのない激しい頭痛や、普段の頭痛と違う、どんどん頭痛が悪化しているような場合には、ただちに医療スタッフに相談しましょう。
心に関係する症状
がん患者さんが経験する心に関係する症状の代表的なものが「不安」と「落ち込み」です。初めてがんと診断されたとき、治療と向き合うとき、心が動揺してしまうのは、特別なことではありません。一方、日常生活に支障をきたすほど、不安な気持ちや落ち込みが強く出てしまうこともあります。そのようなつらい状態が長く続く場合には、一人で抱え込まずに、早めに医療スタッフに相談しましょう。適切な心のケアを受けることでつらさを軽減することができます。
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がんの症状を医師に伝えるポイント
これらのがんの症状が現れたら、がまんしないで早めに医師や医療スタッフに相談することが大切です。でも、自分の症状を伝えるのは難しいものです。ただ漠然と不調を訴えるだけでは、医療従事者にうまく伝わらない可能性があります。たとえば痛みを伝える場合、痛みを感じる場所やその強さだけでなく、いつから感じている痛みか、そしてどのような場合に強くなるかなど、症状をより具体的に伝えると、医療従事者はその原因を推測し、最適なサポートをおこなうことができるようになります。
症状の具体的な場所を伝える
その症状が出ている身体の場所を具体的に伝えてください。たとえば痛みであれば、身体の表面が痛いのか、身体の中が痛いのか、全身なのか、部分的であればどこなのか、などです。症状がその場所だけにとどまっているのか、広がっているのか、症状のある場所が変化しているのかなども伝えましょう。
症状のつらさや性質を伝える
症状のつらさの伝え方としては、日常生活にどのくらい支障が出ているのか具体的に伝えるのがよいでしょう。いままで経験した症状のつらさと比較してどうなのか、耐えられない症状を10とした場合に今の症状の度合いがいくつなのか伝える方法もあります。
同時に症状の性質を伝えるのも大切なポイントです。痛みであれば、キリキリ、ビリビリ、ズーン、ズキズキ、締めつけられるような、焼けるような、電気が走るような、などさまざまな表現があります。
いつからどのような状況で始まったか、どのように変化しているかを伝える
その症状がいつから始まったのか、どのような状況で、なにかきっかけがあって始まったのかを説明しましょう。また、その症状は時間が経つにつれてどのように変化しているのか、症状が悪化したり、軽くなったりするきっかけがあればそれも伝えましょう。
チェックシートを活用してがんの症状をうまく伝えましょう
まずは、現在あなたが抱えている症状に該当するページを選び、パソコンまたはスマートフォンで該当する項目にチェックを入れて印刷してみましょう。もちろん、該当する症状のページを印刷してから、シートにあなたの状況を直接チェックすることもできます。ここで整理したことをもとにして、あなたの今の状態を医療従事者に伝えてみましょう。
- 以下の項目へのチェックは、あなたの今の状態を医療従事者へ伝えるためのものであり、状態を数値化するものではありません。
- 監修
- 国立がん研究センター がん対策情報センター本部 副本部長
若尾 文彦 先生 - 更新月
- 2024年12月