がん治療の副作用対策とセルフケア:
便秘
便秘は、がんの治療や副作用対策として服用している薬、心理的な影響などさまざまな影響で起こる副作用です。中でも抗がん剤で起こった場合は下剤をしっかり服用することが便秘解消の決め手となります。ここでは便秘の対策とセルフケアについてご紹介します。
便秘の症状
便が十分量かつ快適に出ない状態が続くことがあります。治療前と比べて、排便の回数や量、便の状態がどう変わったのかを伝えましょう。また、吐き気や腹痛などがある場合は、その症状も一緒に伝えることが大切です。
がん治療中に便秘が起こるしくみ
抗がん剤治療による自律神経への作用や腹部への放射線照射、吐き気止め、痛みに対して使用される医療用麻薬の副作用で起こる場合があります。また、水分摂取量の低下や運動不足、心理的な負担なども影響します。特に胃や腸の手術後は便秘になっていないか注意する必要があります。
便秘が続くと吐き気につながることもあるので、特に吐き気の心配のある方は下剤を服用して便秘を解消しましょう。
- 過去に腹部の手術をした方や腹膜播種が起きている場合に起こりやすいです。
- 抗がん剤投与後は2~5日目頃に起こりやすいといわれています。薬によっては便秘が慢性化してしまうケースもあります。
便秘の予防と対策
予防
- 便秘が起こりやすい薬を使用する方や便秘がちの方には、下剤が処方されます。
- 水分補給や適度な運動、(可能であれば)食物繊維が豊富な食べ物を積極的にとるようにしましょう。
対策
- 便秘の解消には、まずは処方された下剤をしっかり服用することが大切です。抗がん剤で起こった便秘は生活習慣の改善のみでは対処できません。下剤の量は排便の状況に応じて調節しましょう。
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便秘に対する一般的な対策は、以下になります。
- 排便習慣をつける(毎日朝食後に便意がなくてもトイレに行く)
- 水分補給する(1日にコップ7~8杯ほどの水分を摂る)
- 適度な運動(1日に10~15分程度)をおこなう
- 腹部を温める
- お腹のマッサージ など
便秘があるときの食事の工夫
水分を積極的に摂り、食物繊維を多く含む食品を取り入れましょう。ただし、胃や腸など消化管の手術をした後の方は、機能が回復するまでは、食物繊維の多い食品はおすすめできません。食べる場合は量を控えめにする、繊維を切るように細かく切る、よく噛むなどの注意が必要です。
- 乳酸菌入りの食品や適度な油分を摂ることも便秘の解消につながります。
おすすめ食品・メニュー
- 穀物、豆類、野菜など
→ 便のかさを増して腸管を刺激します。
- 昆布、わかめ、ごぼう、きのこなど
→ 善玉菌を増やして腸内環境を改善します。
胃や腸の手術後の方は特に注意が必要です
胃や腸の手術後の便秘など、抗がん剤の副作用以外の原因で便秘が起こっている可能性も。「たかが便秘」と思わずに主治医に相談しましょう。
こんなときは相談を:
- 便やおならが出ず、お腹のひどい張りや腹痛、嘔吐がある。
- 下剤を服用しても効果がない。
- 下剤の服用量の調節の仕方がわからない。
- 監修
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- 国立がん研究センター中央病院 腫瘍内科 科長 米盛 勧
- 国立がん研究センター中央病院 薬剤部 主任 宇田川 涼子
- 国立がん研究センター中央病院 副看護師長 がん薬物療法看護認定看護師 三浦 仁美
- 国立がん研究センター中央病院 栄養管理室長 土屋 勇人
- イラスト
- USANET
- 更新月
- 2023年3月