がん治療の副作用対策とセルフケア:
吐き気‧嘔吐
抗がん剤による吐き気・嘔吐は、患者さんが不安になる副作用の一つかもしれません。症状の起きやすさは薬によっても異なりますが、最近では予防的に服用する薬も目覚ましく進歩してきました。ここでは、吐き気・嘔吐の対策とセルフケアについてご紹介します。
吐き気・嘔吐の症状
ムカムカする、吐き気がある、嘔吐してしまった、などで食欲が落ちてしまうことがあります。食欲がないことを伝えるときは、いつから症状があるのか、1日に何回食事がとれているか、治療前と比べて食事量が何割くらいに減っているかを伝えましょう。水分補給(水分がペットボトル何本分くらい、どのようなタイミングで摂れているかなど)も大切な情報です。
伝え方の例:
- 治療前が10割だとすると3割くらいしか食べられていない。
- 薬を飲むときしか水分を摂れていない。
がん治療中に
吐き気・嘔吐が起こるしくみ
抗がん剤治療や放射線治療によって、延髄にある嘔吐中枢が刺激されて起こります。また、治療中はにおいに敏感になりがちです。緊張や不安、以前に治療したときの吐き気や嘔吐の経験がその刺激になることもあります。
- 吐き気の起こりやすさは、薬によって程度が異なります。ご自身が使用する薬がどの程度なのか主治医に確認しておきましょう。
- 抗がん剤投与後、当日~10日過ぎた頃に起こりやすいとされています。
- 放射線照射後は、照射日当日に吐き気が出やすいです。
吐き気・嘔吐の予防と対策
口内炎の予防には口の中を清潔にしておくことが大切です。口内炎ができたときには、炎症止めの薬や保湿剤を入れたうがい薬(痛みが強い場合は痛み止めの薬が加わることもあります)、ステロイドの外用薬を処方されることがあります。症状がひどくなる前に相談しましょう。
予防
- 吐き気が出やすい抗がん剤を投与する場合は、予防的に吐き気止めの点滴や内服薬を使用します。緊張や不安で吐き気が出てしまう方には気持ちを落ち着かせる作用のある薬が処方されることもありますので、相談してください。
- 投与当日は、食事は腹8分目にとどめ、身体をしめつける服は避けるようにしましょう。
- 吐き気は翌日以降に出ることが多いため、投与後1週間はご自身の体調によって食事を調節したり(油っこい食事を控える、満腹を避ける、食事の回数を分けて1回の量を少なめにするなど)、ゆったりとした服を着るなど工夫してみましょう。
対策
- 横向きに身体を休ませ、吐き気止めが処方されている場合はがまんせず服用しましょう。
- 食事がとれなくても、食欲が戻って必ず食べられる時期は来ますので、焦る必要はありません。食べられそうなものから口にしてみましょう。刺激のある香りは吐き気を催すことがあるため、避けたほうがよいかもしれません。
- 電解質も補給できる経口補水液やスポーツドリンクなどでこまめな水分補給を心がけることも大切です。
吐き気・嘔吐があるときの
食事の工夫
調子のよいときに(食べられそうなタイミングをみて)、食べやすいものをゆっくりと、少量ずつ食べるようにしましょう。吐いてしまっても気にしすぎる必要はありません。
- 食事量が多くなるほど消化管への負担が増えるため、少なめに盛り付けましょう。
- 食事はこまめにとり、消化のよい食品、口当たりのよい、さっぱりとしたメニューを選びましょう。油っぽいメニューは避けたほうがよいかもしれません。
- 温かく、湯気が出るものはにおいが気になりやすいため、冷ましてから食べるようにしましょう。
おすすめ食品・メニュー
- いろいろな食品を取り混ぜたメニューを選ばないようにしましょう(においが混ざって食べづらくなります)。ご飯やおかゆ、うどん、そうめん、卵、豆腐、乳製品、ゼリー、プリンなどがおすすめです。
- 少量で栄養補給ができる栄養補助食品も、自分に合うものがあればうまく活用してみましょう。
調理のワンポイントアドバイス
煮る、蒸す、茹でるなどして、やわらかく調理しましょう。においや臭みを消すような食品(お酒、ショウガなど)を使って調理するとよいでしょう。
吐き気・嘔吐には
対策があります。
がまんせずに相談しましょう
吐き気や嘔吐で食欲が落ちると、栄養がうまく摂取できないことにつながります。身体の回復のためにも、症状が続く場合や吐き気止めを使っても改善しない場合は主治医に相談しましょう。
こんなときは相談を:
- 食事や水分摂取ができない日が2日間以上続いている。
- 腹痛、頭痛、発熱、脱力感などが激しい。
- 尿量が減少していて尿の色が濃い。
- 処方された吐き気止めを服用しても症状が改善されない、水分が摂れない。
- 監修
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- 国立がん研究センター中央病院 腫瘍内科 科長 米盛 勧
- 国立がん研究センター中央病院 薬剤部 主任 宇田川 涼子
- 国立がん研究センター中央病院 副看護師長 がん薬物療法看護認定看護師 三浦 仁美
- 国立がん研究センター中央病院 栄養管理室長 土屋 勇人
- イラスト
- USANET
- 更新月
- 2023年3月