Q様
50代後半
同居家族:
妻
治療歴
同居家族:
妻
性別 :
男性
発症時年齢:
40代
現在の年齢:
50代後半
現在の職業:
自営業(発症時:会社員)
現在の状態:
経過観察中
既往歴 :
C型肝炎、肝硬変
※患者さんの名前は仮名です。
※本サイトに掲載している体験談は個々の患者さんのご経験をインタビューした
内容に基づき作成しています。病状や経過、治療への向き合い方などはお一人おひとり異なります。
内容に基づき作成しています。病状や経過、治療への向き合い方などはお一人おひとり異なります。
Q様の体験談
C型肝炎への罹患を機に改めた肝臓との付き合い方
15年ほど前の健康診断で「肝機能の数値が悪い」と言われました。当時、日本酒や焼酎を1日1升ぐらい飲んでいたので「当然だろうな」という感じで、あまり気にも留めてなかったです。特に飲み方を変えるでもなく過ごしていた3年後、健康診断で肝機能が「要再検査」になりました。受診してみると「C型肝炎」という診断。医師からは特に「治療しなさい」とも言われず、私も「あ、こんな感じなんだ」と思った程度でした。
そんなことを娘に話したところ、強く治療を勧められたこともあり、肝臓の治療に強そうな病院を受診しました。1年間、インターフェロン治療を続けたもののほとんど効果はなく、C型肝炎ウイルスは消えませんでした。「全員に効くわけではない」とは聞かされていたので「まあ仕方ないかな」と。その後、新しい薬を試せることになって、12週間の治療を受けてC型肝炎は完治しました。うれしかった、と言えばそうですけど、C型肝炎って、かかっていても元気なんです。症状や不具合があるわけでもなく、調子が悪いこともなかったので「苦しみから解放された」みたいな感覚はなかったですね。
自覚症状はなかったものの、治療を始めたときから、少しずつ健康を意識するようにはなっていきました。お酒は盆と正月の年2回に制限していました。お酒をやめるのはそれほど大変ではなくて、正直、タバコのほうが難しかったです。その後もタバコは続けていましたが、数年前に電子タバコへ切り替え、今はもうあまり吸わなくなりました。主治医から「酒はもちろんだが、できればタバコもやめた方がいい」とずっと言われ続けていたからです。
そんなことを娘に話したところ、強く治療を勧められたこともあり、肝臓の治療に強そうな病院を受診しました。1年間、インターフェロン治療を続けたもののほとんど効果はなく、C型肝炎ウイルスは消えませんでした。「全員に効くわけではない」とは聞かされていたので「まあ仕方ないかな」と。その後、新しい薬を試せることになって、12週間の治療を受けてC型肝炎は完治しました。うれしかった、と言えばそうですけど、C型肝炎って、かかっていても元気なんです。症状や不具合があるわけでもなく、調子が悪いこともなかったので「苦しみから解放された」みたいな感覚はなかったですね。
自覚症状はなかったものの、治療を始めたときから、少しずつ健康を意識するようにはなっていきました。お酒は盆と正月の年2回に制限していました。お酒をやめるのはそれほど大変ではなくて、正直、タバコのほうが難しかったです。その後もタバコは続けていましたが、数年前に電子タバコへ切り替え、今はもうあまり吸わなくなりました。主治医から「酒はもちろんだが、できればタバコもやめた方がいい」とずっと言われ続けていたからです。
発症 / 診断
肝切除 / 焼灼
完治したC型肝炎の経過観察で肝臓がん発覚
C型肝炎が完治して半年後の定期検査で、肝臓がんが見つかりました。「C型肝炎が治った後にがんが見つけるというのはよくあることだから、定期検査をちゃんとやっていこうね」とは言われていたものの、「え? やっぱりできちゃったんだ……」とショックでした。
幸い、早期発見で1センチ前後と小さく、先生から「ラジオ波焼灼術で済むから大丈夫だよ」と言われたので、少し安心しました。先生が深刻にならずにサラッと言ってくれたのが、逆に心強かったです。「ステージで言うといくつですか?」みたいな質問を私もしなかったんですけど、大きさ的に初期なんだろうなとは勝手に思っていました。ラジオ波焼灼術は無事に成功して、やがて経過観察に入りました。
肝臓がんになって、私には「やれるときにやりたいことをやっておこう」という覚悟ができました。私はオートバイに乗るのが好きなんですが、昔から憧れていた長距離のツーリングを意識的に計画しました。実際、10日間や1か月などの長期休みをとって、日本中隅々までキャンプツーリングに行きました。
幸い、早期発見で1センチ前後と小さく、先生から「ラジオ波焼灼術で済むから大丈夫だよ」と言われたので、少し安心しました。先生が深刻にならずにサラッと言ってくれたのが、逆に心強かったです。「ステージで言うといくつですか?」みたいな質問を私もしなかったんですけど、大きさ的に初期なんだろうなとは勝手に思っていました。ラジオ波焼灼術は無事に成功して、やがて経過観察に入りました。
肝臓がんになって、私には「やれるときにやりたいことをやっておこう」という覚悟ができました。私はオートバイに乗るのが好きなんですが、昔から憧れていた長距離のツーリングを意識的に計画しました。実際、10日間や1か月などの長期休みをとって、日本中隅々までキャンプツーリングに行きました。
医師との信頼関係と家族への思い
最初の肝臓がんから5年後、2回目の肝臓がんがわかりました。かなりショックで、「え? またできちゃったの……?」という感じでした。でも、この時も先生が「できたら、取っていくしかないね」とさらっと言ってくれて、少し救われた気がしました。
先生がどこに住んでいるとか、何が趣味とか、詳しく知っているわけではないですが、そもそも自分の体のことを任せる以上は、やっぱり信じていかないといけない。自分自身を安心させるためにも先生を信じるところからスタートしないといけない、という気持ちがあります。だから、言われることは素直に聞くし、「再発しないため、治すためにはどうするのがいいですか?」ということも先生によく聞いた気がします。こういったやり取りを重ねる中で、先生との信頼関係が築かれていったのだと思います。
家族の支えはありがたかったです。妻や娘が心配してくれるのはうれしかった。ただ、正直、「あまり迷惑を掛けたくない」という気持ちもありました。高齢の母には、病気のことは一切話していません。年も年だし、余計な心配をさせたくないからです。
先生がどこに住んでいるとか、何が趣味とか、詳しく知っているわけではないですが、そもそも自分の体のことを任せる以上は、やっぱり信じていかないといけない。自分自身を安心させるためにも先生を信じるところからスタートしないといけない、という気持ちがあります。だから、言われることは素直に聞くし、「再発しないため、治すためにはどうするのがいいですか?」ということも先生によく聞いた気がします。こういったやり取りを重ねる中で、先生との信頼関係が築かれていったのだと思います。
家族の支えはありがたかったです。妻や娘が心配してくれるのはうれしかった。ただ、正直、「あまり迷惑を掛けたくない」という気持ちもありました。高齢の母には、病気のことは一切話していません。年も年だし、余計な心配をさせたくないからです。
先生からの一言
医師 奥坂先生
外来が混んでいるとなかなかできないこともあるのですが、患者さんとの信頼関係を築くために「患者さんの話を遮らないように、なるべく最後まで聞く」、「患者さんが何をどうしたいと考えているか、できるだけご希望を聞く」ということを心掛けています。限られた外来時間を上手に使えるよう、事前に患者さんの方でも医師に伝えたいことをメモに整理してご準備いただけると、お互いの理解が深まりやすくなると思います。ぜひチャレンジしてみてください。
不安と希望が交錯する経過観察の日々
次の定期検査までの間は、いつも「再発していないといいな」と思います。一方で、「再発したらしたで、しょうがない」という気持ちも持つようにしています。この考えに至ったのは、これまでに何度か再発を経験したからです。最初の再発は大きなショックでしたが、徐々に「これが自分の現実なんだ」と受け入れるようになりました。先生から「10年空いてもまた再発する可能性がある」とも聞いていて、一生付き合っていく覚悟が必要だと実感したのです。
とはいえ、今までの経験から、早期発見・早期治療がちゃんと治せる可能性が高くて、安全にも繋がることがわかっているので、早い段階から先生に「なるべく早く見つけてほしいので、できるだけ定期検査も間隔を空けないでやってほしい」くらいのことは言っていたと思います。
また、日々の生活では、健康に気を遣うようになりました。できるだけ運動したり、先生に聞いて、青魚を食べたり、BCAAなどのサプリメントを一生懸命飲むようになりました。でも「これに気を付ければ再発しない」なんて、誰にもわかりません。ただ、できることをやっていく。それが今の生活です。検査の前は今も緊張しますが、やはり「再発したら、しょうがない。再発は誰のせいでもない。運なんだ」と自分に言い聞かせています。
とはいえ、今までの経験から、早期発見・早期治療がちゃんと治せる可能性が高くて、安全にも繋がることがわかっているので、早い段階から先生に「なるべく早く見つけてほしいので、できるだけ定期検査も間隔を空けないでやってほしい」くらいのことは言っていたと思います。
また、日々の生活では、健康に気を遣うようになりました。できるだけ運動したり、先生に聞いて、青魚を食べたり、BCAAなどのサプリメントを一生懸命飲むようになりました。でも「これに気を付ければ再発しない」なんて、誰にもわかりません。ただ、できることをやっていく。それが今の生活です。検査の前は今も緊張しますが、やはり「再発したら、しょうがない。再発は誰のせいでもない。運なんだ」と自分に言い聞かせています。
限界を感じた健康相談員とのやりとり
当時、会社が契約していた健康相談員みたいな人、3~4人くらいに相談したと思います。しかし、言われることは皆さん一緒で「禁酒・禁煙・運動」ばかり。新しい発見は特になく、だんだん相談する気もなくなりました。
がん相談支援センターや病院の相談窓口などを、利用しようと思ったことは一回もないですね。正直、「相談することで、がんが治ったり再発を防げるなら利用するけど……」という感じです。でも、そうじゃないですよね。
振り返ると、主治医以外にはあまり相談していないです。妻にも相談することもあまりなかった。結局、自分の体は自分で守る。そんな風に考えているのかもしれませんね。
がん相談支援センターや病院の相談窓口などを、利用しようと思ったことは一回もないですね。正直、「相談することで、がんが治ったり再発を防げるなら利用するけど……」という感じです。でも、そうじゃないですよね。
振り返ると、主治医以外にはあまり相談していないです。妻にも相談することもあまりなかった。結局、自分の体は自分で守る。そんな風に考えているのかもしれませんね。
看護師からの一言
看護師 橋本様
会社が契約していた健康相談で「禁酒・禁煙・運動」ばかり言われて、相談する気がなくなってしまったのは本当に残念なご経験でしたね。「がん相談支援センター」にもあまり期待はされていなかったようですが、実は、Q様にとって、より実践的な情報を得ることができる可能性もあるんです。
「がん相談支援センター」では、肝臓がんを体験された患者さん同士の出会いの場や勉強会のご紹介を通じて、再発予防のための暮らし方や生き方、考え方など、さまざまな気づきを得られる機会をご提供しています。また、病気のことだけではなく、日常の愚痴や、これからやりたいこと、夢なんかも話せる「自分探しの場所」としても活用できると思います。
気軽に立ち寄れる場所として、ぜひ一度、利用してみてはいかがでしょうか。きっと新しい発見があると思います。
「がん相談支援センター」では、肝臓がんを体験された患者さん同士の出会いの場や勉強会のご紹介を通じて、再発予防のための暮らし方や生き方、考え方など、さまざまな気づきを得られる機会をご提供しています。また、病気のことだけではなく、日常の愚痴や、これからやりたいこと、夢なんかも話せる「自分探しの場所」としても活用できると思います。
気軽に立ち寄れる場所として、ぜひ一度、利用してみてはいかがでしょうか。きっと新しい発見があると思います。
ご家族からの一言/Q様の奥さま
夫が私に何かを相談することはあまりありませんが、夫が心配事を抱えているのではないか?と感じることはありますね。特に、定期検査の結果が気になる時です。「もうそろそろ検査も終わってるかな」「悪い結果だったら電話が来るだろう」と、私なりに気にはかけていますが、私から積極的に「何か心配なことはない?」と聞き出すことはしませんでした。お互いの性格もあるでしょう。言ってくれれば聞きますが、こちらから率先して相談を求めることはなかったんです。それでも、身体への影響が心配だったので、タバコのことは本当にしつこく言いました。お酒よりもタバコのほうが周りにも害を及ぼしますし。「うるさい」と言われるくらい言い続けましたね。
看護師からの一言
看護師 橋本様
ご主人が心配事を抱えているのではないか?と感じながら過ごされる日々には、不安もおありかと思います。「がん相談支援センター」はご家族の利用も可能です。ちょっとしたことでも、ご相談されてみてはいかがでしょうか。
がんになりますと、患者さんご本人だけではなく、ご家族の生活も大きく変わります。お子さまや親御さん、友人や職場の方など、周りの人とのコミュニケーションに悩むこともあるでしょう。伝える・伝えないよりも「伝え方」が大切になりますので、「がん相談支援センター」に伝え方のコツについてアドバイスをもらうのもよいでしょう。
また、平日の通院や入院時の面会、経済的なことなど、治療に伴う「生活の調整」に悩むこともあると思います。そんな時にも、「がん相談支援センター」に相談することで、今後の見通しを知ることや使える制度や社会資源について具体的に知ることができます。そういった生活の調整にはタイミングも大切ですので、先に知っておくとよいことを相談員から上手に聞き出してみてください。
がんになりますと、患者さんご本人だけではなく、ご家族の生活も大きく変わります。お子さまや親御さん、友人や職場の方など、周りの人とのコミュニケーションに悩むこともあるでしょう。伝える・伝えないよりも「伝え方」が大切になりますので、「がん相談支援センター」に伝え方のコツについてアドバイスをもらうのもよいでしょう。
また、平日の通院や入院時の面会、経済的なことなど、治療に伴う「生活の調整」に悩むこともあると思います。そんな時にも、「がん相談支援センター」に相談することで、今後の見通しを知ることや使える制度や社会資源について具体的に知ることができます。そういった生活の調整にはタイミングも大切ですので、先に知っておくとよいことを相談員から上手に聞き出してみてください。
肝切除 / 焼灼
3回目、4回目の再発:持病として付き合う決意
3回目の再発のとき、3個のがんができていて、ついに開腹手術と言われました。「開腹手術はしないほうがいい」「体にダメージがかなり大きい」と知人から聞いていたので、すごく嫌でした。でも、完治する可能性が一番高いと説明されて仕方なく受け容れました。
ところが、手術直前のCTで状況が変わって、3個のうち2個が見えなくなり、ラジオ波焼灼術で治療できることになったんです。ただ、今回はかなり痛くて、苦しかったです。それまでのがんは10ミリくらいだったのが、3回目は3センチくらいあって。その周りの細胞まで焼くので、結構大きな範囲を焼いて。結構キツかったですね。この時だったか、肝硬変ということも言われました。それまで「あなたは肝硬変です」と言われたこともなくて、自分がいつから肝硬変だったかは、よくわからないんですけど。
入院中、同じ病室だった70代後半くらいの方が、肝臓がんの手術を何度も受けておられると知ってびっくりしました。そんなこともあって「もう、肝臓がんは自分の持病みたいなものとして、一生付き合っていくんだ」と思うようになりました。
そして近々、4回目の再発で入院します。今回は12~13ミリで1個だけなので、さほどショックでもありません。不安はありますが、「またできちゃったな」という気持ちでいようと思います。5年たとうが、10年たとうが、この気持ちを維持しないといけないと思ってますんで。(注:その後、無事に手術を終えて退院されました)
ところが、手術直前のCTで状況が変わって、3個のうち2個が見えなくなり、ラジオ波焼灼術で治療できることになったんです。ただ、今回はかなり痛くて、苦しかったです。それまでのがんは10ミリくらいだったのが、3回目は3センチくらいあって。その周りの細胞まで焼くので、結構大きな範囲を焼いて。結構キツかったですね。この時だったか、肝硬変ということも言われました。それまで「あなたは肝硬変です」と言われたこともなくて、自分がいつから肝硬変だったかは、よくわからないんですけど。
入院中、同じ病室だった70代後半くらいの方が、肝臓がんの手術を何度も受けておられると知ってびっくりしました。そんなこともあって「もう、肝臓がんは自分の持病みたいなものとして、一生付き合っていくんだ」と思うようになりました。
そして近々、4回目の再発で入院します。今回は12~13ミリで1個だけなので、さほどショックでもありません。不安はありますが、「またできちゃったな」という気持ちでいようと思います。5年たとうが、10年たとうが、この気持ちを維持しないといけないと思ってますんで。(注:その後、無事に手術を終えて退院されました)
がんとの向き合い
がんを経験したことで「今」を生きる決意ができた
3回目の再発時に「やれるときにやりたいことをやっておこう」という気持ちがさらに強まって、会社を辞めて、夢だった自営業をすることにしました。
がんとの闘いは続きますが、もちろん人生も続いていきます。がんがあるからこそ、今やりたいことをやろう、と思えるようになりました。
がんとの闘いは続きますが、もちろん人生も続いていきます。がんがあるからこそ、今やりたいことをやろう、と思えるようになりました。
読者へのメッセージ
できるだけ、がんが小さいうちに見つけて治療したほうが、体への負担も再発のリスクも少なくなると思います。そのためには、健康診断による早期発見が何より大切です。特に自営業の方は、ご自分で意識して、お金をかけてでも受けた方がいい。周りの知り合いを見ていても、見過ごして手遅れになっていたことがありますので、健康診断は重要だと思います。
C型肝炎については、わかった時点ですぐに治療したほうがいいと思います。私の場合は、わかってから何年も治療せずに、お酒も飲み続けていました。わかった時点で、すぐに治療をしていれば、肝臓がんになっていなかったかもしれないので。
C型肝炎については、わかった時点ですぐに治療したほうがいいと思います。私の場合は、わかってから何年も治療せずに、お酒も飲み続けていました。わかった時点で、すぐに治療をしていれば、肝臓がんになっていなかったかもしれないので。
ご家族からの一言/Q様の奥さま
家族の支え方は人それぞれ、家庭それぞれだと思います。私たち夫婦の場合、お互いを信頼して、自己管理を大切にしています。別の家庭では違うやり方があるかもしれません。大切なのは、ご家族なりのコミュニケーション方法を見つけることじゃないでしょうか。
がんと診断されても、必ずしも家の中が暗くなるわけではありません。できるだけ明るく、前向きな気持ちでいることが、心身の健康にも繋がると思っています。
がんと診断されても、必ずしも家の中が暗くなるわけではありません。できるだけ明るく、前向きな気持ちでいることが、心身の健康にも繋がると思っています。