※本サイトに掲載している体験談は個々の患者さんのご経験をインタビューした
内容に基づき作成しています。病状や経過、治療への向き合い方などはお一人おひとり異なります。
内容に基づき作成しています。病状や経過、治療への向き合い方などはお一人おひとり異なります。
からくり様の体験談
発症 / 診断
慢性肝炎の定期検査で肝臓がんが発覚
30年ほど前に行った副鼻腔炎の手術前の血液検査でB型肝炎ウイルスに感染していることがわかりました。当時、肝臓の検査数値が多少悪く、慢性肝炎との診断を受けた2~3年後から、週2回ほど総合病院で注射を打ち、飲み薬を毎日飲んでいました。その頃から、肝細胞がんになる可能性があるから治療を続けておいた方が良い、と言われていたので、定期的に通院しながら半年から1年に1度はエコー、CT、MRI等の検査も受け経過観察を続けていました。体調は良好でしたから、がんになるとは全く思っていませんでした。ところが定期検査で肝臓がんが見つかったのです。
ただ、見つかったのは肝臓の端のほう、皮膚に近い場所に1つの腫瘍だけで、手術で簡単に切除できると言われたこともあり、あまりショックを感じることはありませんでした。早期に発見できたので、医学も進歩しているし切除して再発しなければ大丈夫だろうと考えていたのです。
ただ、見つかったのは肝臓の端のほう、皮膚に近い場所に1つの腫瘍だけで、手術で簡単に切除できると言われたこともあり、あまりショックを感じることはありませんでした。早期に発見できたので、医学も進歩しているし切除して再発しなければ大丈夫だろうと考えていたのです。
肝切除 / 焼灼
腹腔鏡手術で肝臓の約半分を切除
定期検査を受けていた医師からご紹介いただいた病院でより詳細に調べてみると、もう1箇所、がん化しそうな部分がみつかりました。そこも切除した方が良いだろう、と、最初に見つかった腫瘍を含めて腹腔鏡で肝臓の約半分を切除する手術を受けました。入院期間は2週間ほどだったと思います。設備も整っており、先生も慣れておられるようでしたので殆ど不安はありませんでした。腹腔鏡手術は、初日の麻酔が醒めるまでは多少混乱しましたが、穴を開けた皮膚の痛みがあった程度です。術後2日目には自分で立ち上がれるほど回復し、3日目にはリハビリのために院内を歩き始めましたが、痛みは全くありませんでした。
家内も気丈に普段通り振る舞ってくれた
がんの診断を受けて、私よりも家内のほうが動揺していたと思います。不安を与えないよう、いつもと同じように接するようにしました。動揺したり、泣いたりしてもどうにもならないですからね。それを察してか、家内も気丈に普段通り振る舞ってくれましたし、退院後には、私も普段通り家事などをこなしました。
職場のほうは、手術のために1ヶ月ほど休みましたが、勤務条件が恵まれていたこともあり、傷病手当などの制度を使うことなく、1ヶ月後には通常通りの勤務に復帰できたため、仕事の面で困ったことは殆どありませんでした。
職場のほうは、手術のために1ヶ月ほど休みましたが、勤務条件が恵まれていたこともあり、傷病手当などの制度を使うことなく、1ヶ月後には通常通りの勤務に復帰できたため、仕事の面で困ったことは殆どありませんでした。
TACE
再発が見つかりTACEを受けることに
腹腔鏡手術から1年ちょっと経過した定期検査のCTで、再発した腫瘍が2つ見つかりました。最初の手術で完全に切除して治った、再発しない、と思っていたので、これはショックでした。でも先生から「大丈夫ですよ、ほかにもたくさん治療法がありますから」と言われ、少し安心しました。肝動脈化学塞栓療法(TACE)をすることになり、1週間ほど入院しました。TACEは、意識がある状態で足の付け根の動脈から肝臓まで管を入れ、腫瘍に抗がん剤を流し塞ぐという治療です。2つのうち1つはうまくいきましたが、もう一つは複雑な場所にあり、管が届かず様子見することとなりました。TACE自体の痛みはなく、退院後も活動制限はありませんでしたが、術直後の午後から翌日の朝まで絶対安静が必要で、お手洗いにも行けず、背中が痛くなりました。辛かったことがあるとすれば、その安静にすることくらいでしょうか。
看護師からの一言
看護師 橋本様
TACE後は出血予防のため安静が必要ですが、長時間の安静はお辛いですよね。安静を保ちながらできることとして、音楽やラジオを聴くなどが、気分転換になるかもしれません。補助枕等を使って少しずつ体位を変えると少し楽になることもあります。
また、安静必要時の看護視点からの支援として、ベッド上でもできる日常生活支援があります。顔を温かいタオルで拭くとか、手をお湯につけて洗う手浴、歯磨きなどでリフレッシュしつつ、生活のリズムを体が思い出すような支援をさせていただいています。またシーツや寝衣のシワを整えることも、気持ちよくお休みいただくのに役立つと思います。
また、安静必要時の看護視点からの支援として、ベッド上でもできる日常生活支援があります。顔を温かいタオルで拭くとか、手をお湯につけて洗う手浴、歯磨きなどでリフレッシュしつつ、生活のリズムを体が思い出すような支援をさせていただいています。またシーツや寝衣のシワを整えることも、気持ちよくお休みいただくのに役立つと思います。
副作用への対処については、ご自身で判断せず、必ず医師や薬剤師・看護師等にご相談ください。
薬物療法
TACE後の再発に対して抗がん剤の治療を選択
TACEの3ヶ月後に、こんどは小さい腫瘍が7つみつかりました。TACEを受ける際に、治療後も再発する可能性があることは聞いてはいましたが、同時期に母が他界したこともあり、このときは精神的に一番落ち込みました。腫瘍の数が多いからか、TACEではなく抗がん剤で治療することになりました。このとき先生に余命について尋ねたところ、「1年半くらい」と言われてしまったことや、抗がん剤に対してあまり良くないイメージを持っていたこともあり、ショックが大きかったです。
抗がん剤の治療を始めてみると、想像していたよりも副作用が少なく、仕事への影響も殆どありませんでした。嬉しいことに治療効果もあって、がんが縮小しました。多少の副作用はありますが、それぞれに対策を講じていただき、ごく普通に生活できています。仕事や生活との両立が叶うこの治療をずっと続けられることを願っています。
抗がん剤の治療を始めてみると、想像していたよりも副作用が少なく、仕事への影響も殆どありませんでした。嬉しいことに治療効果もあって、がんが縮小しました。多少の副作用はありますが、それぞれに対策を講じていただき、ごく普通に生活できています。仕事や生活との両立が叶うこの治療をずっと続けられることを願っています。
薬剤師からの一言
薬剤師 阿部様
肝細胞がんに限らず、抗がん剤治療は外来での治療が増えてきているため、治療と生活や仕事の両立をうまく続けていくためには、ご自宅でのご自身による副作用対策や管理、つまりセルフケアが大切です。例えば爪や手足の皮膚の副作用に対しては、保湿剤や抗炎症剤等を使ってコントロールするようにします。薬剤師は、抗がん剤治療によって、どんな副作用が起きる可能性があるかを事前にご理解いただき、予防できること、症状が出た時にできることについて、情報提供していますので、ぜひご活用ください。
高額療養費制度やがん保険で治療費の不安は軽減
治療費については、高額療養費制度が使えますし、がん保険にも入っていたので、心配はありませんでした。また、家内も仕事をしていますし。さらに肝がん・重度肝硬変治療研究促進事業があったので、経済的な不安なく治療を受けることができています。
がんとの向き合い
抗がん剤治療を続け、仕事や趣味も体力が続く限り楽しむ
7つの小さい腫瘍の再発がわかったときに、「余命1年半」、と言われましたが、抗がん剤治療を1年続け、大きな副作用もなく普通に仕事や生活ができていることで、いまは希望がないわけじゃないが、なるようにしかならないと思っています。自分でもいろいろと調べながら、わからないことは先生に聞いて自分で考えて一つ一つ解決していっています。インターネット上にはさまざまな情報がありますが、仕事柄、情報の取捨選択、選別をして、良いと思うものを取り入れるようにしています。いずれ趣味のコンサートや山城歩きも体力が続く限り楽しみたいと思っています。
また、術後の痛みは当たり前だ、と我慢せず、ご遠慮なく医療者にお伝えください。痛みをコントロールする方法もありますし、術後経過の異常の早期発見につながることもあります。