※本サイトに掲載している体験談は個々の患者さんのご経験をインタビューした
内容に基づき作成しています。病状や経過、治療への向き合い方などはお一人おひとり異なります。
内容に基づき作成しています。病状や経過、治療への向き合い方などはお一人おひとり異なります。
Kana様の体験談
発症 / 診断
ステージⅡの肝細胞がんの告知を受けたショックでパニックに
職場の人間ドックの血液検査で肝臓の数値に異常を指摘され、かかりつけのクリニックで受けた超音波エコー検査でも影が見つかったため、大学病院で再検査を受けました。それまで毎年受けていた人間ドックでは異常はありませんでしたが、今から思うと疲れやすくなった、食欲が低下していたなどの傾向はあったように思います。大学病院ではCT、MRI、腫瘍マーカー等の検査を行い、1週間後の結果を待ちましたが、「何か重大な病気だったらどうしよう」と思うと落ち着かず、ふわふわした気持ちで過ごしていました。子どもが「そんなに心配しなくても大丈夫だよ」と言ってくれたのが心の支えでした。
結果を一人で聞くのは不安で、夫に付き添ってもらい、ステージⅡの肝細胞がんの告知を受けました。私は告知を受けたショックでパニックになってしまい、先生の話が頭に入りませんでした。先生は治療についても、タブレットなどを使いながら分かりやすいよう説明してくれましたが、私は前向きな気持ちになれず、同行してくれた夫にしっかり聞いてもらえたのは助かりました。2つできていた腫瘍のうち1つが大きいため、すぐに治療を開始した方が良いと言われ、次回の診察までに方針を決めることになりました。
結果を一人で聞くのは不安で、夫に付き添ってもらい、ステージⅡの肝細胞がんの告知を受けました。私は告知を受けたショックでパニックになってしまい、先生の話が頭に入りませんでした。先生は治療についても、タブレットなどを使いながら分かりやすいよう説明してくれましたが、私は前向きな気持ちになれず、同行してくれた夫にしっかり聞いてもらえたのは助かりました。2つできていた腫瘍のうち1つが大きいため、すぐに治療を開始した方が良いと言われ、次回の診察までに方針を決めることになりました。
自身の体質や仕事のことを考慮して放射線治療を選択
いろいろな治療法を提案されましたが、どれが良いのかわからず、治療の内容やメリット・デメリットについてインターネットで調べたりもしました。治療方針を決める診察のときは、先生にいろいろ質問し、どの治療法が良いかよく話し合いました。私の止血しにくい体質、肝機能が低下していたこと、仕事もできるだけ休みたくなかったことなど総合的に判断し、放射線治療を選択しました。放射線治療は2週間毎日外来通院で行い、仕事は時短勤務で休まず続けました。
TACE
TACE後はなかなか本調子に戻らなかった
放射線治療を終えた1ヶ月後に、もともと予定していた肝動脈化学塞栓療法(TACE)をしました。初めて聞く治療だったこともあり、どのような治療で何に気をつけるべきなのか、など調べていくうちに、「肝臓がんは再発が多い」という情報に触れ、「治療を頑張っても再発してしまうのか…」と、落ち込みました。TACEでは1週間入院しましたが、体力が落ちてしまいなかなか本調子に戻らず、当初予定していたフルタイムでの職場復帰は叶わず、時短勤務から徐々に元のペースに戻していきました。治ったら大好きな旅行に行きたいということを励みに気持ちを保っていました。
入院中支えになったものの写真
がんとの向き合い
がんになったことで生活習慣を見直した
私はもともと肝臓が弱いようで、家系には肝臓がんも多く、遺伝的な要因でがんになったのかなとも考えました。若い頃からお酒が好きで、毎晩一定量楽しんでいましたが、がんになったことで、命にかかわるならと生活習慣は見直しました。主治医からもお酒はやめたほうが良いと言われ、アルコールは徐々に控えノンアルコールに移行し、いまは断酒しています。脂肪肝傾向もあったため、それまではカロリーなど気にせず食べていましたが、こちらも見直しました。
先生からの一言
医師 奥坂先生
肝臓は、食事や運動などの生活習慣と密接に関わっている臓器ですから、病院での治療だけでなく、ご自分でも取り組めることはあります。アルコールを控えていただくことで肝臓への負担が減りますので、できればやめたほうが良いと思いますし、食事については、バランスよく、カロリーを摂りすぎないよう心がけていただくと良いでしょう。
また、治療中だからといって、ずっと安静にしていなくてはならないということはありません。気持ちが良い程度の適度な運動もお勧めします。
また、治療中だからといって、ずっと安静にしていなくてはならないということはありません。気持ちが良い程度の適度な運動もお勧めします。
子どもたちの前向きな言葉が心の支えに
告知のときはパニックになっていたので、夫が付き添ってくれて落ち着いてメモなどを取ってくれたことは、本当に助かりました。2人の子どもたちには、がんであることは伏せ「病気で治療することになった」とだけ話しました。再発後は抗がん剤治療で頻繁に通院していたこともあり「何の病気なの?」と聞かれ、やむを得ず伝えることになりました。入院で家を空けることなく自宅にいながら治療できていたこともあり、子どもたちには精神的にも安心感があったようで、「絶対治るから」と励ましてくれました。私が落ち込んでいると、子どもたちが前向きな言葉をかけてくれましたし、家事なども手伝ってくれて、精神的にも肉体的にも家族は本当に心の支えです。
職場の方の励ましで治療に専念できた
初回治療は放射線治療を選択し、仕事を休む必要はありませんでしたが、時短勤務調整をする必要があったため、職場にはがんのことを話しました。「仕事が治療の負担になるようであればいつでも言ってください」と配慮いただき、安心して治療に臨むことができました。通院や入院で周りの方に仕事の負担をかけて申し訳ない気持ちもありましたが、「気にしないで」と、本当に嫌な顔をせず励ましてくださったので、治療に専念できたことは本当に有り難かったです。治療後にきちんと社会復帰されたがん経験者の知人がいることも励みになりました。
副作用への対処については、ご自身で判断せず、必ず医師や薬剤師・看護師等にご相談ください。
薬物療法
再発が見つかり抗がん剤での治療を始めた
TACE治療後、主治医から肝臓がんは再発しやすいがんなので、定期的に受診してくださいと言われ、2~3ヶ月に1度のペースで経過観察をしていました。1年半後に再発が見つかりました。小さい腫瘍でしたが複数あり、手術での治療が難しいとの判断で、抗がん剤治療を提案されました。主治医に選択肢として提案された複数の抗がん剤について、それぞれの効果や副作用について納得のいくまで質問しました。仕事では転職を機に管理職に就いており、仕事を休まず治療ができる観点からも、提案された抗がん剤の1つを選択し治療を始めました。
抗がん剤の治療開始から1~2週間経過した頃、副作用が出現したため、薬剤師さんに連絡したところ、すぐに診察予約を入れていただき先生と相談したうえで休薬や減量を試みましたが、別の抗がん剤治療に変更することになりました。
抗がん剤の治療開始から1~2週間経過した頃、副作用が出現したため、薬剤師さんに連絡したところ、すぐに診察予約を入れていただき先生と相談したうえで休薬や減量を試みましたが、別の抗がん剤治療に変更することになりました。
薬物療法
治療と仕事の両立により日常生活が戻ってきた
抗がん剤の治療では、医師と相談の上、副作用があるときは休むようにしています。当時、仕事が週の半分は在宅勤務だったため、治療と仕事の両立もでき、日常生活が戻ってきて気持ちもだいぶ落ち着いてきました。別の抗がん剤治療に変更して半年経過したところですが、今のところCT画像上では再発した腫瘍も小さくなってきており、転移も見つかっておらず、安心感を得られています。このまま良くなってくれればいいなと希望を持って治療を続けています。
医療者との十分な対話が治療の納得感に
主治医には、なんでも聞くようにして、納得いくまで相談するようにしています。抗がん剤の説明の際には、薬剤師さんと看護師さんも同席してくださっていました。薬剤師さんには、副作用や飲み方について細かく質問しましたが、皆さん丁寧に教えてくださって、納得して治療を進めることができました。薬剤師さんからは処方時に「自宅で何かあったらいつでも連絡をください」と連絡先をいただいていたので、体調が悪化したときには迷わずお電話できました。「一緒に治療を頑張りましょう」と寄り添ってくださって、孤独な闘いではなく精神的に安心感が得られ、治療に前向きに向き合っていこうという気持ちになれました。
薬剤師からの一言
薬剤師 阿部様
近くに医療者がいない日常生活のなかでも、薬物治療に関する不安や心配ごとは生じますよね。そんな時は、ご遠慮なくお気軽にご連絡ください。「何かあればいつでもご連絡ください」と言われていても、遠慮してしまうことがあるかもしれませんが、不安や心配を抱えたままにせず、ご相談いただければと思います。医師は、外来や手術などでご相談いただいたときに対応できない場合もありますので、ぜひ薬剤師を頼ってください。私たちが受けたご相談は主治医とも情報共有しますので、どうか安心してご連絡ください。
読者へのメッセージ
肝細胞がんと言われたら、はじめはショックを受けるかもしれませんが、いまは新しい治療がどんどん出てきています。ご自身で納得のいく選択をされれば、希望を持って治療に臨むことができるのではないでしょうか。精神的にも肉体的にも、落ち込まず前向きに治療に向き合うのが良いと思います。
告知の際、医療者は、ご本人がご自分らしく納得いく決断ができるよう、がんであること、病状、ステージ、治療やその効果について、その時点でわかっていることや事実を可能な限りきちんとお伝えする必要があると考えています。治療の時間や仕事や家庭、日常生活にも影響することもありますので、お一人でお話を聞くことになった場合は、ご自身の理解を整理することも兼ね、聞いたお話をご家族や大切な人にどのように伝えたら良いか、看護師などの医療者に相談すると良いかもしれません。