Black Pug様
50代後半
同居家族:
一人暮らし
治療歴
同居家族:
一人暮らし
性別 :
女性
発症時年齢:
40代
現在の年齢:
50代後半
現在の職業:
自営業(発症時:自営業)
現在の状態:
経過観察中
既往歴 :
乳がん、子宮頸がん
※患者さんの名前は仮名です。
※本サイトに掲載している体験談は個々の患者さんのご経験をインタビューした
内容に基づき作成しています。病状や経過、治療への向き合い方などはお一人おひとり異なります。
内容に基づき作成しています。病状や経過、治療への向き合い方などはお一人おひとり異なります。
Black Pug様の体験談
発症 / 診断
他のがんの経過観察時に見つかった肝臓の影
いまから9年前、私の肝臓がん発症はまったく予期せぬものでした。それまで私は、乳がんと子宮頸がんに罹患していましたが、その経過観察中のCTで偶然、肝臓に「影」が見つかったのです。
精密検査をするため、すぐにダイナミックCTの予約を取りました。結果を聞きに病院に行くと、消化器内科に呼ばれました。「内科に通されるということは、手術しなくても大丈夫なパターンかな?」と勝手に安堵していましたが、先生からは「おそらく肝臓がんだと思われます。開腹して切除が必要です」と言われました。病院に行く前にいろいろと治療法を調べていたので「焼灼術ではダメなんですか?」と聞いてみると、「あなたの場合は適応外です。第一選択は切除になるので、今から外科に行ってください」と言われ、安堵の気持ちはあっという間に崩れ去りました。
泣きながら外科に入ると、先生から「造影剤の染まり方と抜け方から肝臓がんの可能性が高いです。ステージがⅡからⅢの中間ぐらいです」と告げられました。私は一瞬にしてパニック状態に陥って、号泣していました。これまで肝機能も問題ない、お酒もタバコも飲まない、肥満もない自分が、どうして肝臓がんになるのか?まったくわからない、納得いかないというのがその時の気持ちだったと思います。
精密検査をするため、すぐにダイナミックCTの予約を取りました。結果を聞きに病院に行くと、消化器内科に呼ばれました。「内科に通されるということは、手術しなくても大丈夫なパターンかな?」と勝手に安堵していましたが、先生からは「おそらく肝臓がんだと思われます。開腹して切除が必要です」と言われました。病院に行く前にいろいろと治療法を調べていたので「焼灼術ではダメなんですか?」と聞いてみると、「あなたの場合は適応外です。第一選択は切除になるので、今から外科に行ってください」と言われ、安堵の気持ちはあっという間に崩れ去りました。
泣きながら外科に入ると、先生から「造影剤の染まり方と抜け方から肝臓がんの可能性が高いです。ステージがⅡからⅢの中間ぐらいです」と告げられました。私は一瞬にしてパニック状態に陥って、号泣していました。これまで肝機能も問題ない、お酒もタバコも飲まない、肥満もない自分が、どうして肝臓がんになるのか?まったくわからない、納得いかないというのがその時の気持ちだったと思います。
肝切除 / 焼灼
息子のために早期回復を目指して、リスク覚悟の腹腔鏡手術
外科の先生からは開腹による「区域切除」が勧められました。
その時、私の頭の中は真っ白でしたが、ただただ、当時不登校だった高校生の息子のことが気がかりで「開腹して長期に家を空けるなんて無理。早く家に帰らなければ」という思いだけが強くありました。我が家がひとり親ということもあって余計に、焦りや不安、覚悟など、いろいろな思いがないまぜになっていたんだと思います。また、乳がんで左胸を全摘していたため、これ以上、絶対に身体に傷を作りたくない気持ちも強かったです。そのため、さまざまな治療選択肢について冷静に考える余裕がなかったにも関わらず、私は事前に調べていた「腹腔鏡手術」にこだわりました。
そのことを先生に伝えると「腹腔鏡手術のリスク」について詳しく説明されました。腹腔鏡では区域切除はできず、部分切除しかできない。やったとしたら、危険な上に再発や転移のリスクが上がる、といった説明でした。
しかし、私の決意は固く、息子の話もした上で「リスクがあっても腹腔鏡でお願いします」と強く主張しました。
外科の診察室に入って小一時間やり取りした頃でしょうか。「再発や問題が起きても、責任は取れませんよ」と釘を刺されましたが、先生は最終的に私の希望を受け入れてくれました。先生が腹腔鏡手術を受け入れてくれたので、セカンドオピニオンについては考えませんでしたが、もし断られていたら、他の病院を探していたかもしれません。
1カ月後、腹腔鏡手術は行われて、無事にがんを取りきることができました。
その時、私の頭の中は真っ白でしたが、ただただ、当時不登校だった高校生の息子のことが気がかりで「開腹して長期に家を空けるなんて無理。早く家に帰らなければ」という思いだけが強くありました。我が家がひとり親ということもあって余計に、焦りや不安、覚悟など、いろいろな思いがないまぜになっていたんだと思います。また、乳がんで左胸を全摘していたため、これ以上、絶対に身体に傷を作りたくない気持ちも強かったです。そのため、さまざまな治療選択肢について冷静に考える余裕がなかったにも関わらず、私は事前に調べていた「腹腔鏡手術」にこだわりました。
そのことを先生に伝えると「腹腔鏡手術のリスク」について詳しく説明されました。腹腔鏡では区域切除はできず、部分切除しかできない。やったとしたら、危険な上に再発や転移のリスクが上がる、といった説明でした。
しかし、私の決意は固く、息子の話もした上で「リスクがあっても腹腔鏡でお願いします」と強く主張しました。
外科の診察室に入って小一時間やり取りした頃でしょうか。「再発や問題が起きても、責任は取れませんよ」と釘を刺されましたが、先生は最終的に私の希望を受け入れてくれました。先生が腹腔鏡手術を受け入れてくれたので、セカンドオピニオンについては考えませんでしたが、もし断られていたら、他の病院を探していたかもしれません。
1カ月後、腹腔鏡手術は行われて、無事にがんを取りきることができました。
主治医との対話が支えた前向きな姿勢
経過観察が始まった最初のほうで「どうして私は肝臓がんになったんですか?」と先生に何度も尋ねました。「あなたの場合は原因不明の肝臓がんなんです」と説明されました。「最近は、お酒を飲まない女性でもこういったパターンの肝臓がんが増えているんですよ」とも教えてくれたので、「自分だけじゃないんだ」という安心感のようなものも感じることができました。
CTの検査頻度が月1回から半年に1回に変わった時には少し安心しました。先生が私の再発の可能性に対して少し余裕を持って対応してくれるようになったんだなと感じて、良い方向に向かっているのではないか、という希望が湧きました。
手術から2~3年経った頃に、先生が「実は、かなり難しい位置にあったので二度とやりたくないほどなんです」と笑いながらおっしゃいました。術後1、2年はそういった話はされなかったので、しっかり経過を観察するところに集中させてくださったんだと思います。
そのような感じで、先生は常に私の状態を気にかけてくださいました。「極めて再発しやすいがんですよ」と注意を促しながらも、前向きに経過を見守ってくれました。先生の丁寧な説明と前向きな態度は、私が治療に積極的に取り組もうと思えるきっかけとなりました。
CTの検査頻度が月1回から半年に1回に変わった時には少し安心しました。先生が私の再発の可能性に対して少し余裕を持って対応してくれるようになったんだなと感じて、良い方向に向かっているのではないか、という希望が湧きました。
手術から2~3年経った頃に、先生が「実は、かなり難しい位置にあったので二度とやりたくないほどなんです」と笑いながらおっしゃいました。術後1、2年はそういった話はされなかったので、しっかり経過を観察するところに集中させてくださったんだと思います。
そのような感じで、先生は常に私の状態を気にかけてくださいました。「極めて再発しやすいがんですよ」と注意を促しながらも、前向きに経過を見守ってくれました。先生の丁寧な説明と前向きな態度は、私が治療に積極的に取り組もうと思えるきっかけとなりました。
先生からの一言
医師 奥坂先生
肝臓がんは従来、B型またはC型肝炎ウイルスが原因となるケースが多くありました。しかし最近は、これらのウイルスに対する治療によって肝炎ウイルスが原因の肝臓がんが減少し、いわゆる「非B型」「非C型」の肝臓がんが増えています。非B型、非C型の肝臓がんには、アルコールや脂肪肝が原因のものや原因不明なものなどが含まれています。
相談する機会が、主治医以外にあまりなかった
私は、がんに関する相談機関を利用しませんでした。先生以外に相談する機会がなかった、というのが実際のところです。
例えば、告知を受けた診察室から出た後に、待合室で泣いていた私のそばに看護師さんが来てくれました。しかし、周りには他の患者さんもいたため、詳しい話はできませんでした。個室などプライバシーが確保された場所で話せる機会があれば、もっと相談できたかもしれません。やっぱり場所を選ぶ話ってあると思いますので。
「がん相談支援センター」を利用しなかった理由は、主に二つありました。一つは、診断直後のパニック状態で、院内外でそのような窓口の存在を考える余裕がなかったこと。もう一つは、息子のことを考えて、あまり家を空けたくなかったからです。
そのような窓口は、通っていた病院内にもなかったと思いますが、もし、先生や看護師さんからそういった相談先を紹介されていたら、利用していたかもしれません。がんの治療だけでなく、家庭の問題も含めて相談できる場所があれば、心の重荷を少し軽くできたかもしれないですね。特に、オンラインでの相談が可能だったら、家を空けずに利用できたので助かったと思います。そう考えると、医療従事者からの積極的な声掛けや相談窓口の紹介は、患者の心理的なサポートの第一歩として重要なのだと思います。
例えば、告知を受けた診察室から出た後に、待合室で泣いていた私のそばに看護師さんが来てくれました。しかし、周りには他の患者さんもいたため、詳しい話はできませんでした。個室などプライバシーが確保された場所で話せる機会があれば、もっと相談できたかもしれません。やっぱり場所を選ぶ話ってあると思いますので。
「がん相談支援センター」を利用しなかった理由は、主に二つありました。一つは、診断直後のパニック状態で、院内外でそのような窓口の存在を考える余裕がなかったこと。もう一つは、息子のことを考えて、あまり家を空けたくなかったからです。
そのような窓口は、通っていた病院内にもなかったと思いますが、もし、先生や看護師さんからそういった相談先を紹介されていたら、利用していたかもしれません。がんの治療だけでなく、家庭の問題も含めて相談できる場所があれば、心の重荷を少し軽くできたかもしれないですね。特に、オンラインでの相談が可能だったら、家を空けずに利用できたので助かったと思います。そう考えると、医療従事者からの積極的な声掛けや相談窓口の紹介は、患者の心理的なサポートの第一歩として重要なのだと思います。
看護師からの一言
看護師 橋本様
診断後の不安やお子さんのことなど、本当に大変な思いをされたのですね。Black Pug様にとって、とてもお辛い日々だったことと思います。
治療に向きあう時、病気や治療のことはもちろん、家庭のこと、お子様のこと、また、おひとり暮らしの方も治療と仕事や生活の両立など、不安になることがたくさんあると思います。正しい情報と適切な治療選択が重要になりますが、さまざまな情報がたくさん入ってくるために、気持ちが揺らいでご自身を見失いそうになる時もあるでしょう。そんな時は、肝臓がんの治療に詳しい病院の「がん相談支援センター」に電話をかけて、気になっていることを質問することから始めてみるのもよいでしょう。
「がん相談支援センター」は、厚生労働大臣が指定した全国の「がん診療連携拠点病院」などに設置されています。患者さんご本人やご家族はもちろん、どなたでも無料で相談できますし、がん相談支援センターのある病院に通っていなくても相談可能です。看護師、ソーシャルワーカー、心理士などが相談員として対応しており、対面だけでなく、電話でも相談可能です。最近では、メールやチャットでの相談に対応するセンターも出てきています。例えば「がん情報サービスサポートセンター」ではチャットでの相談が可能です。また、匿名でも相談ができますし、相談内容を本人の了解なしに主治医をはじめ他の人に伝えることは決してありませんので、安心してご利用ください。
大切なのは、自分一人で抱え込まないことです。病気のことだけでなく、家族のことも含めて相談できる場所を見つけることで、心の重荷を軽くすることができます。さまざまな選択肢を探ってみてください。
治療に向きあう時、病気や治療のことはもちろん、家庭のこと、お子様のこと、また、おひとり暮らしの方も治療と仕事や生活の両立など、不安になることがたくさんあると思います。正しい情報と適切な治療選択が重要になりますが、さまざまな情報がたくさん入ってくるために、気持ちが揺らいでご自身を見失いそうになる時もあるでしょう。そんな時は、肝臓がんの治療に詳しい病院の「がん相談支援センター」に電話をかけて、気になっていることを質問することから始めてみるのもよいでしょう。
「がん相談支援センター」は、厚生労働大臣が指定した全国の「がん診療連携拠点病院」などに設置されています。患者さんご本人やご家族はもちろん、どなたでも無料で相談できますし、がん相談支援センターのある病院に通っていなくても相談可能です。看護師、ソーシャルワーカー、心理士などが相談員として対応しており、対面だけでなく、電話でも相談可能です。最近では、メールやチャットでの相談に対応するセンターも出てきています。例えば「がん情報サービスサポートセンター」ではチャットでの相談が可能です。また、匿名でも相談ができますし、相談内容を本人の了解なしに主治医をはじめ他の人に伝えることは決してありませんので、安心してご利用ください。
大切なのは、自分一人で抱え込まないことです。病気のことだけでなく、家族のことも含めて相談できる場所を見つけることで、心の重荷を軽くすることができます。さまざまな選択肢を探ってみてください。
私の闘病生活に大きな影響を与えてくれた家族の存在
いま振り返っても、息子の存在が、前を向いて生きていくための強い動機となって、私にがんと向き合う力を与えてくれていたのだと思います。息子のために「私はまだ生きていないといけない」という義務感があって、自分に関してネガティブなことを考える暇もありませんでした。「息子のために早く回復しなければ」という思いが、治療方法の選択や回復への意欲に強く影響を与えていたと思います。
がんとの向き合い
「心の変化」に繋がった「体の変化」
がんとの向き合い方で大きな転機となったのは、漢方内科に通い始めたことです。
肝臓がんの経過が落ち着いてきた頃でも、不登校の息子に関して「将来どうなっちゃうんだろう?」というネガティブな考えは消えず、いつの頃からか、うつ気味の自分に気付く場面が増えていました。
インターネットで「がん」「うつ」「体質改善」といったキーワードでいろいろ見ていると、漢方内科の先生の記事が目に入って。ここに行けばなんとかなるかな?と、ダメ元で訪ねてみたんです。そこで私は「現代型栄養失調」と診断され、食生活の改善を指導されました。この指導を忠実に守ることで体調が良くなっていったと思っています。
そんな体調の変化は「心の変化」にも繋がりました。実感として自分の気持ちも変わっていき、前向きに物事を考えられるようになったんです。
その中で、息子の不登校に対する考え方も大きく変わりました。「元のレールに戻す」のではなく「新しい道を探る」といった余裕ができました。その頃、息子がずっと乗りたがっていた大型バイクに乗り始めて、少しずつ外に出るようになりました。みるみるうちに元気になって、夜遊びまでするようになっちゃって(笑)。「バイクって、ひきこもりをも変えていく魅力があるものなんだな」と思ったら、私も一緒に走りたくなって、大型バイクの免許を取りました。息子と一緒にツーリングに行けたときは感無量でしたね。これは、体調と心の変化があったからこそできた新たな挑戦でした。
肝臓がんの経過が落ち着いてきた頃でも、不登校の息子に関して「将来どうなっちゃうんだろう?」というネガティブな考えは消えず、いつの頃からか、うつ気味の自分に気付く場面が増えていました。
インターネットで「がん」「うつ」「体質改善」といったキーワードでいろいろ見ていると、漢方内科の先生の記事が目に入って。ここに行けばなんとかなるかな?と、ダメ元で訪ねてみたんです。そこで私は「現代型栄養失調」と診断され、食生活の改善を指導されました。この指導を忠実に守ることで体調が良くなっていったと思っています。
そんな体調の変化は「心の変化」にも繋がりました。実感として自分の気持ちも変わっていき、前向きに物事を考えられるようになったんです。
その中で、息子の不登校に対する考え方も大きく変わりました。「元のレールに戻す」のではなく「新しい道を探る」といった余裕ができました。その頃、息子がずっと乗りたがっていた大型バイクに乗り始めて、少しずつ外に出るようになりました。みるみるうちに元気になって、夜遊びまでするようになっちゃって(笑)。「バイクって、ひきこもりをも変えていく魅力があるものなんだな」と思ったら、私も一緒に走りたくなって、大型バイクの免許を取りました。息子と一緒にツーリングに行けたときは感無量でしたね。これは、体調と心の変化があったからこそできた新たな挑戦でした。
先生からの一言
医師 奥坂先生
今回のケースでは、漢方内科に通うことで栄養状態の改善と将来に対する不安な気持ちが解消できて前向きになられたようですね。一方で、漢方の副作用でメインの肝臓がん治療ができなくなってしまうこともあるため、すべての方に当てはまるわけではない点には注意が必要です。あくまで「ひとつの選択肢」として参考になさるとよいでしょう。例えば、主治医から心理士を紹介され、時間をかけてお話を聞いてもらうことで、かなり良い方向にいかれる方もいらっしゃいます。まずは「いろいろな選択肢がある」ということを念頭に、主治医に相談してみることを検討してみてください。
読者へのメッセージ
私自身、3回のがん経験を通じて学んだことは、正しい情報と適切な治療選択の重要性です。
まずはご自身で何らか調べることも多いと思いますが、インターネット上には、玉石混交の情報があふれています。ただでさえ、パニックに陥りやすい状況の中で、効果のない民間療法や単なる金儲けのような治療法の情報はシャットダウンすべきだと思います。そのような危険な選択肢は避けて、まずは、信頼できる医療機関の助言を受けることが大切だと思います。
まずはご自身で何らか調べることも多いと思いますが、インターネット上には、玉石混交の情報があふれています。ただでさえ、パニックに陥りやすい状況の中で、効果のない民間療法や単なる金儲けのような治療法の情報はシャットダウンすべきだと思います。そのような危険な選択肢は避けて、まずは、信頼できる医療機関の助言を受けることが大切だと思います。