※本サイトに掲載している体験談は個々の患者さんのご経験をインタビューした
内容に基づき作成しています。病状や経過、治療への向き合い方などはお一人おひとり異なります。
内容に基づき作成しています。病状や経過、治療への向き合い方などはお一人おひとり異なります。
Mrs.K様の体験談
発症 / 診断
腹膜内悪性腫瘍がわかったとき医師に「勝ちます」と言った
私は30代から毎年人間ドックを受けていたのですが、50代の頃から肝臓の腫瘍マーカーであるAFPの高値を指摘されていました。CT上では肝臓に異常はなかったため、経過を見ていましたが肝臓ではなく腎細胞がんがわかり、右腎臓を切除しています。術後のフォローアップ検査でAFPの異常高値がみられたため、消化器内科を紹介され、そちらで経過観察を続けていたところ、50代で腹膜内悪性腫瘍がわかりました。当時はこれといった症状はなく「原発不明がん」との診断で、術後は抗がん剤治療を開始しました。のちに、これが肝外発育性肝細胞がんに起因するものだと判明しました。
50代で腎細胞がんとなり、右腎を切除してしまったことで大きな喪失感に襲われていましたが、翌年に腹膜内悪性腫瘍がわかったときは、なぜか消化器内科の先生に「勝ちます」と言ったことを覚えています。振り返ってみると、「生きたい」との思いがそう言わせたのかもしれません。
50代で腎細胞がんとなり、右腎を切除してしまったことで大きな喪失感に襲われていましたが、翌年に腹膜内悪性腫瘍がわかったときは、なぜか消化器内科の先生に「勝ちます」と言ったことを覚えています。振り返ってみると、「生きたい」との思いがそう言わせたのかもしれません。
肝切除 / 焼灼
繰り返す再発・転移の度に手術を受けた
腎細胞がんのため右腎を腹腔鏡手術で切除したのが、人生で初めての手術でした。翌年の腹膜内悪性腫瘍も腹腔鏡手術を行い、その2年後に肝臓の一部切除のため開腹手術、××××年に腹膜転移で腹腔鏡手術、再発、転移のたび××××年腹腔鏡手術、××××年開腹手術、 ××××年開腹手術、 ××××年、××××年、××××年に2回、胸腔鏡手術を行なっています。手術の合間に、抗がん剤治療も数種経験しましたし、新たに膀胱がんもわかり治療しています。あらためて振り返るとものすごい経過で、「発育型」肝細胞がんという病名も言葉の通りで納得です。ただ、幸いどの手術のときも経過は順調で、術後の24時間以内には歩いていましたね。
これだけ手術を繰り返していると、入院中には「1年後に生きているのだろうか」との思いが湧き上がり、1年後に生きていたらやりたいこと、目標について考えていました。
これだけ手術を繰り返していると、入院中には「1年後に生きているのだろうか」との思いが湧き上がり、1年後に生きていたらやりたいこと、目標について考えていました。
必要以上に気遣われず自然な感じで接してくれる家族に感謝
がんを経験されていない方だと、わからないことも多々あると思います。こちらは平気でも、気を遣われ過ぎてしまうのも申し訳なくて、はじめは家族にだけしか話しませんでした。夫は闘病当初、診察時には会社を休んで同行してくれていましたが、夫も動揺していたのか、先生からのお話の受け止めが私と違っていることもあり、表には出さずともとても心配していることが伝わってきたため、なるべく一人で通院するようにしていました。家族はいつも自然な感じで接してくれています。必要以上に気遣われるよりもその方が嬉しいですね。
治療が度重なる状況になってきた頃に、日頃から交流のある友人・知人に「病院という名の別荘に行ってきます」とユーモアを交えた手紙を書いて、がんのことを伝えました。それからはみなさん、いつも気にかけてくれて、家のインターフォンをよく鳴らしてくれるんです。私が出れば「今日も無事過ごしているね」と。「具合が悪かったら出なくていいからね、でも毎日ピンポンするからね」といった感じで、気遣ってくださることが有り難かったです。
治療が度重なる状況になってきた頃に、日頃から交流のある友人・知人に「病院という名の別荘に行ってきます」とユーモアを交えた手紙を書いて、がんのことを伝えました。それからはみなさん、いつも気にかけてくれて、家のインターフォンをよく鳴らしてくれるんです。私が出れば「今日も無事過ごしているね」と。「具合が悪かったら出なくていいからね、でも毎日ピンポンするからね」といった感じで、気遣ってくださることが有り難かったです。
治療の影響による外見の変化が不安でつらかった
手術や抗がん剤治療などたくさんの治療を経験してきましたが、日常生活に一番影響があったのは、治療の影響で、友人も私だとわからないくらい外見が変化してしまったことです。将来が不安でたまらなくなり、家族がみな出かけてしまったあと、一人になって家事をしているときなどに、思わず涙が出てしまうこともありました。いま思うと、診断はされていませんが、うつ状態だったのかもしれません。あまりの辛さに先生に薬の変更を申し出てからは、気持ちも身体も楽になりました。先生に自分の思いを伝えたことは本当に良かったと思います。
副作用への対処については、ご自身で判断せず、必ず医師や薬剤師・看護師等にご相談ください。
薬物療法
抗がん剤の副作用は我慢せず主治医に申し出た
最初に経験した抗がん剤は、腹膜内悪性腫瘍の術後補助化学療法です。効果や副作用について先生とも良く話し合い、身体への負担が少ないものを選択しましたので、副作用は殆どありませんでした。リンパ節が肥大したので抗がん剤を変更したところ、副作用が出たため先生に「薬を変えたい」と自分から申し出ました。次に、別の抗がん剤治療を行いました。こちらはあまり副作用もなく、肝臓の腫瘍も少し小さくなったのでそのまま入院を続け開腹手術で肝臓を一部切除しました。術後も抗がん剤治療を続けていましたが、胸膜胸壁に5つ転移がみつかり、4つ目の抗がん剤治療に変更しました。副作用の影響で今は5つ目の抗がん剤治療を続けているところです。
ピアサポーター仲間が集まり患者会を立ち上げることに
入退院を繰り返していた頃、病院で、がん相談支援センターが主催するがんサロンの開催案内のポスターを見つけ、参加していました。その頃、私の住む県では乳がんの患者会しかなかったのですが、県が主導して「ピアサポーター養成講座」が開講されることになり、相談員の看護師さんが受講を勧めてくれました。講座を修了し、県内のがん診療連携拠点病院に出向き、相談支援センターが開催するがんサロンでファシリテーターを務めるようになりました。「がんサロンも治療の場所です」と相談員の方から聞きましたが、本当にその通りで、同じようにがんと向き合う方々と思いを分かち合うことは、とても大切なことだと思います。コロナ禍で対面での開催が難しい時期もありましたが、パソコンが使えない方も多いので、やはり会ってお話できる方が良いですね。
ピアサポーター仲間が集まって、がん体験談集を出したことを機に、患者会も立ち上げることになりました。入院のたびに、次にやりたいことを考えていました。助成金を申請して講演会を開催するなど、さまざまなことにチャレンジするのは、私にとって本当に生きがいの一つであり、生きる喜びです。
ピアサポーター仲間が集まって、がん体験談集を出したことを機に、患者会も立ち上げることになりました。入院のたびに、次にやりたいことを考えていました。助成金を申請して講演会を開催するなど、さまざまなことにチャレンジするのは、私にとって本当に生きがいの一つであり、生きる喜びです。
前向きでいられるのはお話を聞いてくれる先生方のおかげ
私は診察室に入るとすぐに、伝えたいこと、聞きたいことを書きためた手帳を出すんです。なんでも聞くとすぐ返ってくるので、診察のたびにスッキリします。聞きたいことがなくても診察のときはいつも手帳を出して、先生のお話で大事だと思うことをメモしています。今の消化器内科の主治医には十数年継続して診ていただいており、先生とは病気の話だけでなく、何でも話せる関係です。漠然とした不安に襲われ落ち込んでいた時期もありましたが、先生との対話で随分救われました。
手術を担当した医師からは、メールで「何かあったらいつでも言ってください」と連絡をいただきました。「いつなら空いているから、何か話したいことがあれば来てください」など、とても頼りになり安心感がありました。私がこれだけ治療を繰り返しながらも前向きでいられるのは先生方のおかげかもしれません。先生には本当に恵まれていると思います。
がんサロンでは、がん相談支援センターの相談員の看護師さんにもお世話になりました。ピアサポーター養成講座の受講を勧めてくださったのもその方です。退職された今でもお付き合いしているんですよ。
薬剤師さんには、他の病気で処方された薬や気になるサプリメントについても現物を持っていき相談しています。いつも「調べて後日お返事しますね」と快く対応してくださいます。
手術を担当した医師からは、メールで「何かあったらいつでも言ってください」と連絡をいただきました。「いつなら空いているから、何か話したいことがあれば来てください」など、とても頼りになり安心感がありました。私がこれだけ治療を繰り返しながらも前向きでいられるのは先生方のおかげかもしれません。先生には本当に恵まれていると思います。
がんサロンでは、がん相談支援センターの相談員の看護師さんにもお世話になりました。ピアサポーター養成講座の受講を勧めてくださったのもその方です。退職された今でもお付き合いしているんですよ。
薬剤師さんには、他の病気で処方された薬や気になるサプリメントについても現物を持っていき相談しています。いつも「調べて後日お返事しますね」と快く対応してくださいます。
読者へのメッセージ
なんども手術を繰り返してきましたが、××××年以降、手術はしていません。現在は抗がん剤治療を続けています。
皆さんには、先生を信じてなんでも相談して、前向きに治療と向き合っていただきたいと思います。私は自分が使う薬については調べるようにしています。抗がん剤の副作用が辛い時、サプリメントが気になる時も率直にお伝えし、対話を重ねてきました。また、「標準治療は最高の治療だ」ということもお伝えしたいです。私から標準治療以外について相談したこともありますが、先生からしっかりとお話があり、納得して標準治療を受けてきたから今があるのだと思います。
皆さんには、先生を信じてなんでも相談して、前向きに治療と向き合っていただきたいと思います。私は自分が使う薬については調べるようにしています。抗がん剤の副作用が辛い時、サプリメントが気になる時も率直にお伝えし、対話を重ねてきました。また、「標準治療は最高の治療だ」ということもお伝えしたいです。私から標準治療以外について相談したこともありますが、先生からしっかりとお話があり、納得して標準治療を受けてきたから今があるのだと思います。
先生からの一言
医師 奥坂先生
「標準治療」というと、「標準以上の治療」を望む方もおられると思いますが、私は「標準治療」は「ゴールドスタンダード」だと説明しています。これまでの医学の歴史のなかで最も良い治療であり、受けていただかないともったいない治療ということです。民間療法や代替療法を利用されると、場合によっては標準治療ができなくなってしまうこともありますので、そうならないよう見極めていただき、気になること、ご不安なことがあれば、ぜひ医療者にご相談ください。
また、多くの時間を過ごす病院外、地域では、同じ経験をされた患者さん同士の交流や、地域包括支援センターの保健師なども頼りになると思います。困りごとやお悩みは、誰かに相談することで、必要な人や支援につながりやすくなり、解決の糸口が見えてくることがあるので、ぜひ、諦めないでご相談ください。